資格問題

【教師の】nobuさんの設問に答えてみよう【臨床心理士受験】

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心理臨床家nobuのつぶやきBlogのnobuさんが2/27のエントリー、教師の臨床心理士受験者について【トラックバック企画】で以下の問題を出されてました。回答の締め切りは明日の午前0時とのことですので答えてみようと思います。


こんな問題です。

<問題>
教師Aは、臨床心理学系の大学院を修了して受験資格を充当し、
臨床心理士資格審査試験を受験した。
1次試験は無事通過し、2次面接試験にのぞんだ。
ところが、面接試験が始まるやいなや、面接官が、
「教師が臨床心理士資格を取得することには、私は反対です。」
と発言した。
この発言について、どのように解釈し、
どのように対応するのが望ましいと考えられるか。
臨床心理学的な見地、および、臨床心理士資格の理念から考察し、答えよ。
なお、本設問は、
教師が臨床心理士資格を取得することの是非自体を問うているのではないので、
その点注意すること。

さて、いきなりぶっちゃけてしまいますが私は教師が臨床心理士を取得することについて基本的には反対の立場をとっています。で、きっと私が面接官だったらこの設問の面接官と同じような発言をしかねないなぁと思ったりします。そうした観点に基づいて回答してみようと思います。
で、私が面接官としてこういう質問をした場合、それに対して納得のいく返答が得られればそれでいいと思います。ごくごく当たり前の話ではありますが「教師だから落とす」なんて理不尽なことはしません。この面接官の質問は意地悪だとは思いますが、これに対する返答で受験者である教師の臨床心理士観・臨床心理学観が見えてくるようなある意味では良い質問であるとも思います。
私も何度かこのブログで述べてきていますが、臨床心理士の4大業務は
・臨床心理面接
・臨床心理査定
・臨床心理学的地域援助
・臨床心理学的調査・研究
となっており、さらにこの制度はアメリカの心理士制度同様、Scientist-Practitionerモデルをその基本理念の一つとしています。つまり、臨床心理士とは単に臨床実践のみならずその業務として調査・研究を行うことが求められており、さらに私が何度も述べているように、そしてそれがScientist-Practitionerモデルの基本的な考え方でもあるように(心理学の方法論や考え方に基づいたまともな科学的)研究を行うことが臨床実践の質も高められると考えられます。
さて果たして「教師であり臨床心理士でもある個人」が研究活動を行うことは可能でしょうか?私はよほど心理職として優秀な人でない限り、それは不可能に近いと思います。スクールカウンセラーをやっている人、あるいはやったことのある人であれば分かると思いますが学校という所は研究をする上では非常に制約が多い場所だと言えます。当たり前の話ですが、例えば大学の教育学部の附属でもない限り、原則として学校というのは生徒が学ぶための場であり、部外者が研究をするための場ではありません。個人情報などの扱いに対して従来以上の慎重さが求められる昨今では、なおさら学校で研究することは難しくなっていると言えます。
さらに「教師が生徒を対象として研究する」ことの難しさというのもあります。教師が教師である限り、彼は生徒に勉強を教え、さらには生徒を評価する立場にあるわけです。そうした立場にある教師が研究をする際にたとえ教師側が何ら生徒に対して研究対象としてのバイアスを持っていなかったとしても、確実に生徒側は何らかのバイアスを持っています。いくら教師が「これは成績などの評価に何ら関係ない」旨を伝えた上で調査・実験等をやっても、生徒側におけるそうした評価的な側面に対する懸念・疑念は払拭できない可能性があります。
同じことは研究のみならず、臨床実践においても言えると思います。例えば生徒をクライエントとして心理療法的(あるいはカウンセリング的)関わりをしようと思った場合、セラピスト・カウンセラーが教師であった場合、「セラピスト( or カウンセラー)-クライエント」関係の前に「教師-生徒」関係というのが存在しているわけです。心理療法(あるいはカウンセリング)というのは基本的に「セラピスト-クライエント」という関係性を作りその関係性の中で行っていくわけですから、既に他の関係性が存在している状態が治療関係を作ることを阻害する可能性があります(ですから私達も心理検査を行ったことが心理療法の開始と治療関係を作ることに与える影響をいつも考慮する必要があると思っています)。いわば心理療法家・カウンセラーと教師とは全く異なる枠組みで生徒と関わる必要があるのです。
さて、ここで設問の回答となりますが、私が面接官であったとして「教師が臨床心理士資格を取得することには、私は反対です。」 と発言するとしたら、その背景には上記のような考えがあります。逆に私が面接を受ける側の教師であったとしたら、その面接官の発言の背景には上記のような考えがあると解釈することでしょう。nobuさんの設問にある「どのように対応するのが望ましいか」を考えるとしたら、上に書いた考えを踏まえた上で自分が教師という枠組みの中で臨床心理士としてどのように研究し、臨床実践に臨むかを述べますが…はっきり言って上で述べた考えに対して、教師という立場を保つ限りは適切な反論なり回答なりは不可能だと思います。そもそも枠組みが根本的に異なるわけですから。もし「望ましい対応」というのがあるとしたら、それは「教師を辞める」旨を伝えることだと思います…がそれが賢い考え方であるとは思えませんし、教師を辞めて臨床心理士一本で働いていくことなんて言われた日には現実検討力が保たれているかどうか、私だったらまずその辺を疑うでしょう。
臨床心理学を体系的に学んだ「カウンセリング・マインド」(この言葉も個人的には好きじゃないですが)を持った教師というのは、「カウンセリングや心理療法をやろうとしない限り」は「アリ」だと思います。でもそれだったら臨床心理士資格を取得する意味がわかりません。その辺についても踏まえた上でその面接官の発言には対応すべきでしょうね。
さて出題者であるnobuさんがこの教師であったとしてどう回答するのが望ましいんでしょうね?正直、私ゃ回答できまへん。
余談ですが、去年か一昨年の心理臨○学会で「この発表興味あるかもー」と思って聞きにいった基礎研究の発表者が、わりと年配のおばちゃんであるのを見た瞬間イヤ~な予感がしたんですが、発表者のおばちゃんは臨床心理士を取得したばっかり(それか指定大学院の修士課程を修了したばっかり)の中学だか高校の教師だったんですね。イヤな予感は当たって発表はひどい内容でしたとさ。思わず2~3、キツイ質問(というか意見?)をしちゃいました。
長文かつ駄文になってしまいましたが、nobuさんの「模範解答」楽しみにしております。

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