資格問題

日本臨床心理士養成大学院協議会理事会による一資格一法案に対する反対声明について

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既に各所で話題になっておりますが、日本臨床心理士養成大学院協議会(以下 臨大協)の理事会が、臨床心理職国家資格推進連絡協議会、医療心理師国家資格制度推進協議会、日本心理学諸学会連合の3団体を中心に現在検討されている、一資格一法案での臨床心理職の国資格化に対し反対の旨の声明を出しております。

日本臨床心理士養成大学院協議会

反対声明(pdf)

臨大協見解(pdf)

まあなんと言いますか、「ひどい内容」の一言につきますわな。

つなでさんの臨床心理職能メモの昨日のエントリ、事実と食い違うのでは?では、その見解における2点の事実誤認について指摘されております。簡単に2点をまとめると

1.
臨大協の言うところの「3団体」とは日本臨床心理士会、日本心理学諸学会連合、臨床心理職国家資格推進連絡協議会であるが、実際は臨床心理職国家資格推進連絡協議会、医療心理師国家資格制度推進協議会、日本心理学諸学会連合であること

2.

仮にこれが臨床心理職の国家資格化としての一資格一法案の内容についての要望であるとするならば、初めて学部教育に踏み込んでいることになる。

とあるが、二資格一法案の時点で既に「臨床心理士」の受験資格の中に

学校教育法に基づく大学(短期大学を除く。)において主務大臣の指定する臨床心理学等に関する科目を修め、かつ、同法に基づく大学院において主務大臣の指定する臨床心理学等に関する科目を修め、当該大学院の修士課程(博士課程のうち、修士課程として取り扱われる課程を含む。)、博士課程(修士課程として取り扱われる課程を除く。)又は専門職学位課程(同法第65条第2項の専門職大学院の課程をいう。)を修了したもの

一般社団法人 日本臨床心理士会お知らせ・提言資料集国家資格関連情報『臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子(案)』(pdf)より

との言及がなされており、「初めて」ではない

ということだそうで。詳しくはつなでさんのブログ記事をどうぞ。

あと、はらぶろ裕’s Object Relational Worldでも言及されております。

はらぶろ 悲しいけど、これ戦争なのよね(スレッガー中尉)はらぶろ

日本臨床心理士会は当事者団体だってさ裕’s Object Relational World

その他、twitterでもちらほらと関連ツイートが。

皆様、基本的にごもっともなご意見であり、ワタクシも基本的に同意いたします。

そしてワタクシが上記リンク先の声明で一番気になった点(そして、声明の肝となるであろう点)は以下。

反対声明のタイトルは「「臨床心理職の国家資格化の動向」に関する日本臨床心理士養成大学院協議会の見解」とありますが、すぐ下の「理 由 及 び 解 説」にはこう書かれております。

1. 一資格一法案は、「臨床心理士」の国家資格化を推進する不可欠な法案とは言えない。

わかりますよね?

3団体は「『臨床心理職』の国家資格化」について議論しているわけですが、ここで臨大協は「『臨床心理士』の国家資格化」に話をすり替えているわけです。そして以下、終始「『臨床心理士』の国家資格化」の話をしています。

「臨床心理士」の国家資格化に向けて協議を重ねながら、臨床心理士有資格者の理解を得、2005年、大きな力を結集して実現の可能性が具体化したものが「臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子案(「二資格一法案」)」であった。

すでに、一資格一法案の検討に入ること自体、「臨床心理士」の国家資格化を放棄したと認識されても当然であるにも関わらず、「二資格一法案」をベースとする、「臨床心理士の理念を大切にする」と述べることは、臨床心理士有資格者に対する背信行為とも言えるのではないか

日本臨士会は現在の方針から「臨床心理士の国家資格化」という方針に立ち帰り、粉骨砕身の努力を傾注すべきである。

…えーと、日本心理臨床学会資格検討WG報告:「国家資格問題Q&A」のお知らせ(会員限定…ちなみにこれ一般公開すればいいのに。一般公開できない理由は何なんでしょう?)で既にこの辺は触れられてますよ。

Q4 臨床心理士がそのまま国家資格になるのではないのでしょうか?
A4 過去に民間資格がそのまま国家資格になった前例はありません。二資格一法案では、経過措置に関して、資料1の条文となっております。
すなわち、経過措置期間における試験内容の一部免除などの措置は、二資格一法案でも設けられることになっており、今回も同様の検討はありえますが、一部免除が可能か否かは現段階では不確かな状況です。

Q5 「臨床」という名称を大切にするために生じる国資格化の課題は何でしょうか?会員としてはよく分からないので是非を判断できる資料がほしいのですが。
A5 「臨床」という名称をつけることに、さまざまな理由から難色を示す人達がいました。国家資格は広く、外部の人達との合意なしには進められない状況です。2005年7月、二資格一法案が上程できなかった理由の一つとして、医療団体からの二資格一法案への反対声明がありました。そのなかに、名称に関する反対も含まれていました。しかし、あれから5年が経過していますので、関連団体と密に情報交換を継続する必要があります。

なんと言いますか、臨大協の認識は2~3年くらい前で止まってるんじゃない?って感じですよ。

ついでに

 4基本方針の2 )については次項以降に解説するが、3 )について、「臨床心理士の理念を大切にする」とはいったいどのような内容を含んだ記述なのか。この点も不明なままに議決がなされており、問題である。すでに、一資格一法案の検討に入ること自体、「臨床心理士」の国家資格化を放棄したと認識されても当然であるにも関わらず、「二資格一法案」をベースとする、「臨床心理士の理念を大切にする」と述べることは、臨床心理士有資格者に対する背信行為とも言えるのではないか。
 この議決が行われたとき、11の都道府県臨床心理士会から要望・意見・疑問点等が書面で出され、加えて少数の個人から意見が書面で出されている。また、複数の理事からも反対発言が出されている。このような一資格一法案の検討に慎重・反対の意見があるなかで、議決内容が賛成58名、反対6名(内、4名は理事)、白票8名、欠席・途中退席4名の圧倒的多数の賛成であったことは、一資格一法案が含みもつ内容を都道府県臨士会代議員が十分に理解していなかったためであると考えざるを得ない。これは、代議員の問題意識の弱さに帰されることではなく、日本臨士会、日心連、推進連の3団体が水面下で協議を重ねており、その内容が臨床心理士有資格者個人及び都道府県臨床心理士会に理解されていなかったためである。その後、日本心臨学会は2009年10月12日に資格問題に関する緊急理事会を開催し「二資格一法案をベースにして、一資格一法案の検討を進める」との採決動議を否決している。
 このように、日本臨士会は、臨床心理士有資格者個人及び当事者団体にとってその内容を十分に周知されないままに、拙速に一資格一法案の検討に入る議決を行ったものであり、その姿勢は断じて容認できるものではない。

引用長くてすみません。

「圧倒的多数の賛成であったことは、一資格一法案が含みもつ内容を都道府県臨士会代議員が十分に理解していなかったためであると考えざるを得ない」「日本臨士会、日心連、推進連の3団体が水面下で協議を重ねており、その内容が臨床心理士有資格者個人及び都道府県臨床心理士会に理解されていなかったためである」とありますが、基本的に関連情報は(若干のタイムラグはあるものの)各所で公開されてますよね?それは「水面下」とは言わないでしょう。

で、代議員の理解が足りなかったとしたらそんな代議員を選んだ各都道府県臨士会の会員個々の責任でしょうし、議決内容に対して異議を唱えることはできないんじゃないでしょうか?それって間接民主主義、代議制の否定でしょ?

少なくともこの声明に対する好意的な意見というのはネット上では見られないわけですが、諸手を挙げて賛成の人はいるんでしょうかね?

…あー、でもこの辺の人とかは賛成なのかもね。4月以降の更新はないようですが…。

開業臨床心理士のコラージュ療法&雑学日記:So-netブログ

もうね、なんと言ったらいいか…噴飯ものの「声明」でしたとさ。身内で足の引っ張り合いをしてもしかたないでしょうに…なんでもっと建設的な議論ができないものでしょうかねえ?

と他人事のようにしめてみる。

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