臨床心理学

ロールシャッハについて書けない理由

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 最近はちょっと廃れてるみたいですが、少し前、テレビでマジックのタネ明かし的な番組をやってたことがあったみたいですね。「みたいですね」というのは最近あまりテレビを見る時間がないのでよくわからんってことなんですが(ということでソースは主にネットだったりするんですが)、それって楽しいんですかね?


 確かにタネは気になるけど、知ってしまったら終わりじゃないですか。もうそのマジックを見る楽しみというのはなくなってしまいますよね。 
 で、ロールシャッハです。別にロールシャッハは人の心をのぞき見るためのマジックなどではありません。ただ、あのカードの模様は「見たことのない模様」だからこそ重要であり、そしてどうやって解釈するのか、被検者はわからないということが重要なのですね。
 私の師匠、そして師匠の師匠にあたる人はロールシャッハを教える際の方法として、教える前のまだまっさらな状態で「被検者体験」をさせるということを重視していました。それには色々な意味合いがあるのですが、まずは何も知らない状態じゃないとロールシャッハの真価が発揮できないということがあり、そうした無垢な(ナイーヴな)状態でのロールシャッハ体験というのは非常に貴重だということなのです。だって、初体験ってのは一生に一度しかないわけですから。タネ(=図版の特徴だったり解釈法だったり)を知ってからじゃ、どんなに無心で検査に臨んだとしても絶対にバイアスがかかりますよね。
 ネット上をうろついているといくつかロールシャッハについて書いているサイトを見つけることができます。さらにご丁寧に解釈法まで載せているサイトまであったりしますね。最悪なところでは図版を公開しているところまであるかもしれません。そういうサイトは一体、何を考えているんでしょうね?
 本来、アセスメントに利用し、治療上有効に活用できるはずのロールシャッハの価値を貶めていることに気づかないのでしょうか?もし患者さん・クライエントさん(そして将来の患者さん・クライエントさん)が見てしまった場合に、どういった影響があるか考えたことがあるんでしょうか?全てではないにせよ、解釈上、どういった点が重要になるのか、それを臭わせる内容だけでも個人的にはどうかと思います。これを見て、心当たりのある方はそうした書き込みは削除してもらいたいものです。
 以上の理由で、私はロールシャッハについては色々と書きたいこと・議論したいことはあるんですが(だってロテ職人だもん)、誰が見るかわからないこのBlogでは書けないわけです。
 ちなみにこれからロールシャッハを勉強しようと思っている人にも、勉強する前の被検者体験はお薦めしたいと思います。被検者の方がいかに大変かを知るだけでも非常に重要な体験になるはずですよ。

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