臨床心理学

凶悪事件の犯人の卒業文集を分析(という名の戯れ言)するのはそろそろ止めません?

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先日起こった秋葉原無差別殺傷事件。本当に痛ましい事件です。亡くなられた方のご冥福とけがを負われた方のご快復を心よりお祈り申し上げます。
私、基本的に秋葉原好きです。今みたいなアニメだか萌えだかわかりませんが、そんな街の混沌とした感じも好きですが、家電とかPCの街だった頃からの秋葉原好きです。そんな街であんな事件が起こってしまったことは非常に残念に思います。
さて、こういう事件が起こりますと、テレビではお決まりの「専門家による分析w」が垂れ流されるわけです。そういう「分析の垂れ流し」に関しての私の意見は以下のエントリで述べていることに尽きます。
少年の凶悪犯罪に臨床心理学的立場から言えること(05/02/15)
今回はいわゆる「少年事件」ではありませんが、原則は同じです。
私は「実際に犯人に会ったわけじゃないからわからない」し、「こうかもしれないっていう仮説は立てられるかもしれないけど、責任を持った発言はできないからコメントは差し控えさせていただきます」というところです。
んで、そういうのが言えないとこんなことになってしまうわけですねえ。
卒業文集に「ワタシはアナタの人形じゃない。赤い瞳の少女(3人目)」 テレ朝と精神科医が必死に分析ニュース超速報!

秋葉原無差別殺傷の加藤容疑者の高校時代の卒業文集に、「ワタシはアナタの人形じゃない。赤い瞳の少女(3人目)」と書いてあった、とテレビ朝日の夕方のANNニュースが伝えた。加藤容疑者の同級生は、意味が不明だった、などとコメント。
キャスターは「謎の言葉」と紹介。精神科医は「ワタシとかカタカナなのは他者との距離感がどうこう」とコメントし、
「本当の自分を探していたのかも・・・」と締めくくった。


私自身はこの番組見てないのですが…ホントにこんな発言があったとしたら、この精神科医はかなり恥ずかしいと思うわけです。上記ブログ(というか2ちゃんねる)でも取り上げられてますが、これってまんま『新世紀エヴァンゲリオン』の登場人物であるところの綾波レイのセリフじゃないですか。
綾波レイ - Wikipedia
上記リンク先にもあるように、綾波レイは赤い瞳をしたキャラであり、「私はあなたの人形じゃない「私はたぶん3人目だと思うから」は有名なセリフですよ。
このコメントを出した「精神科医」の名前が大変気になるところではあります(というか、ちょこっと検索したところでは誰の発言なのか見つけきれませんでした。さすがに香山リカや斉藤環ではないだろうと思います。その辺の人たちだったら知ってなきゃおかしいし。
つか、こういう憶測100%コメントを垂れ流すこともそうですが、卒業文集を取り上げて云々するのもいいかげん止めません?とりあえず専門家を名乗るんだったらねえ。
大体、卒業文集に書かれていることなんて、その文脈を無視しては何も言えないはずですよ。今回のことはその最たる例で、エヴァのこと知らないがためにこんなとんちんかんな分析になってしまっているわけじゃないですか。
逆に今回の例はむしろわかりやすい方であり、少なくとも「この記述はアニメ作品からの引用である」ということだけはほぼ確実に言えます。でも、もしも書かれていることがその犯人オリジナルのフレーズだとしたら、それこそ仮説はいくらでも立てられますが、それが書かれた文脈が分からない限りはどこまでいっても仮説でしかないわけで。そんな仮説をマスコミ使って垂れ流すのは百害あって一利無しだと、ワタクシなんかは思うのですがねえ。
各種心理検査だって文脈抜きにして目隠し分析をするのは、トレーニング目的以外ではあり得ません。検査以上に構造化されていない卒業文集の分析なんてのは、意味ナッシングでげすよ。
いいかげん、こういう専門家(「自称」をつけてやりたいくらい)はいなくなって欲しいなあと思う今日この頃でございました。

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