食育

学童における食行動と情緒傾向 「一品食べ」と「三角食べ」の比較

投稿日:

なんて言うかもう、いっそのこと「食育」というカテゴリを新しく作ろうかどうか迷ってしまうような今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
昨日のエントリ、食育が気になる その8-「三角食べ」の真実-では、「三角食べ」にまつわるうさんくささについて調べてみましたが…
ふと「三角食べに関する研究、ひょっとしてあるんじゃね?」と思って検索したら…見つけてしまいました!
それがこちら
松本恵子・笹嶋由美・芝木美沙子 2005 学童における食行動と情緒傾向 「一品食べ」と「三角食べ」の比較 学校保健研究, 47(3), 217-223.
です。第一著者になっているのは小学校教諭のようです(あるいは小学校のSCという可能性もアリ?)。
元文献はすぐには手に入らないのですが、Abstructは閲覧できましたのでコピペしますよ。

一品食べなどの食行動と情緒の関連について検討した.旭川市内のD小学校に在籍する児童81名を対象とした.各学年 2ヵ月を要し,その間2回の給食時のビデオ撮影と2種の情緒傾向調査を行った.一品食べ児童の割合は約27%で,55%を高学年が占めた.一品食べ児童に幼児性が残っているものと考えた.「皿なめ」「手指の使用」のマナーについては一品食べグループにおいて悪い傾向を認めた.特に「皿なめ」は顕著に多く, この点でも幼児性や,しつけの欠如等が示唆された.一品食べグループは,三角食べグループと比較して,小児用エゴグラムにおいて,思いやりや共感,受容に欠ける傾向が示唆された.情緒傾向として,不注意,緊張・不安傾向を認めた.一品食べグループでは特異な習癖(爪噛み,指しゃぶり等)が顕著にみられ,背景には緊張,不安があるものと推察された

うーむ…これだけじゃよくわかんないですね…と思って再度検索してみたら、こんなのも見つかりました。
愛育ねっと2006年5月文献抄録
厚生労働省の助成を得て運営している、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所のサイトで、子ども家庭福祉および母子保健分野の文献の抄録を載せているということで、そちらでツッコミ入れていきましょう。

 我が国は米飯は主食で、その米飯に合う様々な副食が作られてきている。昔から受け継がれてきた日本人の食べ方は、主食であるご飯と副食の数品を交互に食べるものであるが、近年、本研究の著者の周囲で、副食ばかり先に食べ、ご飯を最後に食べるいわゆる「一品食べ」が、目立つようになってきた。「一品食べ」をする児童は、皿なめ、手指の使用など、マナーの悪い点も目立ち、さらに、特異習癖、落ち着きのなさ、自己中心的傾向がみられたため、「一品食べ」の背景には単なるマナーの問題ばかりではなく、情緒的な問題もあると著者らは考えている。そこで、本研究は、「一品食べ」などの食行動と情緒の関連について明らかにするとともに、調査結果に基づき、食生活から情緒傾向の把握に結びつけ、教育現場に反映させることを目的に実施している。

いきなり炸裂してます。
仮説を立てるにしても、もう少し論理立てて考えることはできなんでしょうかね?仮説だったら仮説でいいけど、何か最初から決めつけてかかってる感じがしますよ。

 研究対象は小学1年~6年までの児童81名である。各学年、調査に2か月かけ、その間に2回の給食時のビデオ撮影と「小児用エコグラム」を使用した2種類の情緒傾向調査を実施している。

やっぱりこんだけの規模で調査できるのは、学校の先生だからって気がしなくもない。
ビデオの行動観察というか評定はどのように行ったのか気になるところではあります。これは元文献みないとわかんないっすね。

 研究結果は以下のとおりである。

1.「一品食べ」児童の割合は約27%であった。そのうち55%を高学年が占め、「一品食べ」児童に幼児性が残っているものと考えられた。

…これもどういう論理でそう考えるのかわからないです。「一品食べ」をする群の55%が高学年で、「一品食べ」児童に幼児性が残っている…?
意味不明です。誰か教えてください(「こうじゃねーか?」くらいのレベルでいいので)。

2.「皿なめ」「手指の使用」のマナーは「一品食べ」グループにおいて悪い傾向がみられ、特に「皿なめ」は顕著に多く、この点でも幼児性や、しつけの欠如等が示唆された。

これはあるかもしれませんよね。「三角食べ」をしつけられているくらいだから、基本的なマナーは守れるんじゃないかと。

3.「一品食べ」グループは「三角食べ」グループと比較して、「小児用エコグラム」において、思いやりや共感、受容に欠ける傾向が示唆された。

へー。

4.情緒傾向として、不注意、緊張・不安傾向がみられた。

これは「一品食べ」グループに、ということなんですかね?で、これはエゴグラムで分かること…じゃないですよね?給食時のビデオからの行動評定…ということになると、その時点でバイアスかかってるんじゃないですか?

5.「一品食べ」グループでは、特異な習癖(爪噛み、指しゃぶり等)が顕著にみられ、背景には緊張、不安があるものと推察された。

ほー。
この「特異な習癖」はビデオから見られたのでしょうか?それとも普段の行動観察から?どちらにしても、やはり評定者のバイアスを取り除くのは難しいでしょうな。
で、最大の問題は…

 これらの結果から、「一品食べ」の児童は単にマナーの悪さだけではなく、情緒的な問題を抱えていることが明らかになった。

 従来、学校給食の時間は栄養面、マナー面での指導の場として活用されてきた。しかし、情緒の把握の場として位置づけることも可能であることが、本研究結果から推察された。今後は学校給食の時間を教育全般に活用し、心身のバランスのとれた児童の育成に努めていくことが望まれる。

えーと…これ、私が読んだ限りでは「学校給食で「三角食べ」を奨励すれば「心身のバランスのとれた児童の育成」に繋がる」ってことのように思われるんですが…
ホントにそう思ってんの?
ホントにそう考えてるんだとしたら、かなりヤヴァイかと思われますよ。
仮に「一品食べ」の児童が単にマナーの悪さだけではなく、情緒的な問題を抱えているというのがある程度妥当な事実だとして、学校給食の時間を教育全般に活用して(この意味もよくわからないんだけど…)どうやって心身のバランスのとれた児童の育成に繋げられるんでしょうか?
…全くわかりません。
・・・・・・・・・・・・
他人がまとめたアブストラクトだけでどうこう言うのは反則かもしれませんが、なんか論文取り寄せまでしてしまうのもどうかと思いまして…自分の研究テーマともあんまり関係ないし。
そんなわけでこの論文、近くで手に入る人がいたら是非ともコメントください
私が言っていること、間違っていたり見当違いだったりするのであれば、ご指摘いただけるとありがたいです。

ついでに1日1回クリックしていただけるとうれしかったり学問・科学ランキング

-食育

Copyright© ロテ職人の臨床心理学的Blog , 2024 All Rights Reserved.