「大」?
知ってる人にとっては「今さら?」な話かもしれませんが、気になったので少し。
アメリカ精神医学会の精神障害の診断ガイドラインであるDSM-IV-TR(もうすぐ5の日本語版も出そうですが)。その中に「大うつ病性障害」ってありますよね。
「大うつ病性障害」とはざっくり言ってしまえば狭い意味でのいわゆる「うつ病」なんですが、さて、この「大」って何でしょう?
major depressive disorder
元々の英語名である“major depressive disorder”の“major”を「大」と訳したのですよね。
確かに“major”には「大きい方の」とか「より大きい」という意味があります。
a(大きさ・数量・程度など他のものと比較して)大きいほうの,より大きい
じゃあ、一体「うつ」の何が「大きい」んでしょうか?
「大うつ病性障害」って誤訳ですよね
この“major”は、むしろ「めだった」とか「主な」という意味ではないでしょうか。
こんな記述を見つけました。
大うつ病とは主うつ病の誤訳で(中うつ病や小うつ病はありません)、最も多いうつ病を指している言葉です。
ですよねえ。
DSM-5で修正しないの?
先ほども触れたように、もうすぐDSM-5の日本語版が出そうな感じです。
関連本も色々と出てきてますね。
で、疾病概念の大幅な変更なんかもあったみたいなんですが、“major depressive disorder”はしっかり生き残ってます。
・DSM-5勉強メモ:DSM5の全体像、試訳を集めてみる(自殺サイト:自殺 臨床心理学 (和光大学末木新研究室ブログ))
・双極性障害(躁うつ病)の診断基準 DSM-5(ぷしこノート)
DSMも新しくなることだし、訳語も変更しよう!ってことにはならないのでしょうか?…ならないのだろうなあ…。
確かに臨床上困ることはないでしょうけれども、でも「誤訳である」というのは、修正する理由としては十分である気もするのですが。
ちなみに“major league”→「大リーグ」の件
アメリカの最上位のプロ野球リーグは“Major League Baseball; MLB”です。今ではみんな「メジャーリーグ」と言ってますが、一昔前は「大リーグ」と言っておりました。
「大リーグボール養成ギプス」なんてのもありましたね。
この「大リーグ」の「大」も“Major”の訳…と思われがちなのですが、実はメジャーリーグの別名「ビッグリーグ(Big League)」の訳語なのだそうな(参考:メジャーリーグベースボール - Wikipedia)
以上、まめ知識でございました。