国家資格化をめぐるQ&A(2)
既にご覧になった方は多いかと思いますが、先週、1月22日づけで、一般社団法人 日本臨床心理士会が国家資格関連の文章として、こんなのを発表しました。
こちらは、昨年7月に出された国家資格化をめぐるQ&Aに寄せられた質問に答えたものです。
この中で私が一番気になったのはこちらの質問項目と回答です。
Q5:心理師(仮称)は基礎系の資格だという話がありますが本当ですか?
A5: 三団体の『要望書』では業務の内容は、「①心理的な支援を必要とする者とその関係者に対して、心理学の成果にもとづき、アセスメント、心理的支援、心理相談、心理療法、問題解決、地域支援等を行なう。②①の内容に加え、国民の心理的健康の保持及び増進を目的とした予防並びに教育に関する業務を行なう。」としています。この「業務」の内容は現在の臨床心理士が行っている業務です。国家資格は業務の内容に必要な養成を行うものですから、基礎系の資格になるということはありません。
臨床心理士の業務って…
確かにこれらの業務は「現在の臨床心理士が行っている業務」ではあります。
ただ、何か足りなくないですか?
臨床心理士資格保持者であればすぐに気づくと思います。
臨床心理士の4大業務と言えば…日本臨床心理士会の援助の方法のページに書かれております。「心理アセスメント」「心理面接」「臨床心理的地域援助」「研究活動」です。
そう。上で引用したA5には「研究活動」が含まれていないのですよね。
「修士課程修了」が必要な理由は?
さて、この件に関連してQ4を見てみましょうか。
Q4:心理師(仮称)の資格は学部卒の資格であり、試験は医学科目が多くなるという話がありますが本当ですか?
A4: 三団体の『要望書』では、心理師(仮称)は大学院修士修了の 6 年間の養成を基本(学部で心理学を修めて卒業し、大学院修士課程ないし大学院専門職学位課程で業務内容に関わる心理学関連科目等を修め修了した者)とするよう要望しており、自民党 J ファイルでも先進国同様の資格をめざしています。議連の議論でもその点については異論が出ていません。
「6年間の養成を基本とするよう…」というのはいいんですが、その理由は何なんでしょうか?なぜ、修士課程修了(専門職学位課程については話が複雑になるので割愛)とする必要があるのでしょうか?
「先進国同様の資格をめざしています」とあるのを見ると「先進国ではそうだから」という理由なんでしょうか?
それって「A君も持ってるから僕にもゲーム買って!」ってのと一緒じゃないですか?
それじゃあ「よそはよそ!うちはうち!」って言われちゃいますよ。
研究軽視ってどうなんだろう?
個人的には、養成課程において研究は重視したいんですよねえ。
現行の臨床心理士資格は色々と問題点があるわけなんですが、それでもその業務の中に「研究」が含まれていることは誇ってもいいのではないかと思っていたのです。
果たして心理師(仮称)資格において、研究活動はどんな位置づけになるのか?今後の動きに注目したいところです。
…この点についてはあまり期待できないような気もするのですが…