医師に秘密で心理職にセカンドオピニオンを求めにくる患者
既にもう1ヶ月も前の話なんですね。
今年の9月9日に「公認心理士法案」が参議院本会議にて可決、成立し、その当日に朝日新聞が速報的に記事を掲載しております。
心理職、国家資格に 2017年度にも法施行(apital(アピタル):朝日新聞の医療サイト)
お読みいただければわかると思いますが、やっぱり気になるのはこちらのコメントですよね。
支援する相手に主治医がいるときは、その指示を受ける必要性が法に明記された。この点について、臨床心理士の養成に携わる伊藤良子・学習院大教授は「医師に秘密で心理職にセカンドオピニオンを求めに来る患者は少なくない。医師の指示を受けることが前提になると秘密が保てず、結果的に患者のためにならない」と指摘する。
afcpさんのTwitterから
この点について、障害児者専門病院勤務の児童精神科医であるafcp(@afcp_01)さんがTwitterでコメントされてます。
細かいところだけど、秘密のセカンド・オピニオンというのは、そもそも定義の外か例外だからなあ。前医の紹介状なしのセカンド・オピニオンは当てにならないか、似て非なるものか、いずれかだろう。 / “心理職、国家資格に 2017年度にも法…” http://t.co/bJm3KbVr6X
— afcp (@afcp_01) 2015, 9月 9
@afcp_01 セカンド・オピニオンではなく転院なら、最初から情報収集するけど、前医と診断がずれたら、前医が知っていて自分は収集できなかった大事な情報があるんじゃないかとか、取りあえず考えるだろうな。
— afcp (@afcp_01) 2015, 9月 9
@afcp_01 ああ、もしかするとそもそも意味がずれてるのかな。セカンド・オピニオンという場合、前医での治療継続が前提だと思うけど、そうではなく心理職がその後の治療を引き受ける、という秘密の「転院」を想定してるのかな。その方がコメントが理解しやすいな。
— afcp (@afcp_01) 2015, 9月 9
@afcp_01 そう言えば。自分でも書いているけど、セカンド・オピニオン関係の場合にも「前医」という表現は使われているけど、本当はあまり使わない方がよいのかも。「主治医」の方が適切な気がしてきた。
— afcp (@afcp_01) 2015, 9月 9
「セカンドオピニオン」の定義
そもそも「セカンドオピニオン」とは何か?ということを知らないと、この話は始まらないわけでして。その辺りについてはこちらのサイトの記述がわかりやすいです。
・セカンドオピニオンの取得方法と有効な活用方法|セカンドオピニオンガイド
上記サイトから引用させていただきます。
患者さんにとって最善だと思える治療を患者と主治医との間で判断するために別の医師の意見を聴くこと、それがセカンドオピニオンです。
セカンドオピニオンと医師を変えることを同義に考えていらっしゃる方も多いですが、そうではありません。始めから医師を変えたいという意思がある場合は、転院・転医となります。セカンドオピニオンを受けたのち、結果的に別の医師が提供する治療を受けるために医師を変えることはあります。
(セカンドオピニオンの基礎知識 - セカンドオピニオンガイドより)
「最善だと思える治療を患者と主治医の間で判断するために別の医師の意見を聞くこと」が「セカンドオピニオン」なのであり、afcpさんがおっしゃる通り「秘密のセカンドオピニオン」というのは「定義の外か例外」であるわけです。
これは「細かいところ」ではないですね。大事な問題だと思います。
改めて考える「秘密のセカンドオピニオン」
その上で改めて、伊藤良子氏の言うところの「秘密のセカンドオピニオン」とはどういうことなのかを考えてみますと、以下の3つの場合が想定されるのではないでしょうか。
(1)精神科通院中の患者が、主治医に秘密で、治療方針などについて心理職に意見を求めてきた場合
(2)精神科通院中の患者が、主治医に秘密で、現在の精神科診療と同時並行での心理面接を心理職に求めてきた場合
(3)精神科通院中の患者が、主治医に秘密で、現在の精神科診療を中断して心理面接を心理職に求めて来た場合
さらに(3)は以下の2つの場合に分けられるかと思います。
(A)主治医に秘密で現在の精神科診療は中断。他の精神科に転医し、精神科診療と同時並行での心理面接を行う
(B)主治医に秘密で精神科診療を完全に止め、心理職の心理面接に一本化して行う
…と、ここまで書いて(A)はさらに2つの場合に分けられるのに気づきました。
それが
(a)転医先の新しい主治医は、心理面接を行うことを知っている
(b)転医先の新しい主治医は、心理面接を行うことを知らない
です。
だんだん複雑になってきましたので、整理して…と。
考えてみると「(3)の(A)の(a)」って、結局のところ「新しい主治医は、心理面接を行うことを知っている」わけで、これは前医に秘密なだけで、医療に対しては秘密じゃないんですよね。つまりこれは「秘密のセカンドオピニオンには含まれない」ということにしておきましょう。
そして患者が秘密で転医しようとしまいと、心理職にとって重要なのは「心理面接を行うことを主治医が知っているか否か」です。つまり(2)と「(3)の(A)の(b)」は「心理面接を行うことを主治医は知らない」という意味では同じということになります。
結論です。
「秘密のセカンドオピニオン」は以下の3つの場合が考えられます。
(1)主治医に秘密で、治療方針などについて心理職に意見を求める
(2)主治医に秘密で、現在の精神科診療と同時並行での心理面接を心理職に求める
(3)主治医に秘密で精神科診療は中断し、心理面接に一本化することを心理職に求める
これでスッキリしました。
次に、これら3つの場合それぞれでどんな問題が生じるのか?ということについて考えてみましょう!…と思ったのですが、かなり長くなりそうなので続きはまた明日にしたいと思います。
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