以前、倫理がらみの話題を取り上げた時に書いたような気もするのですが…って検索したんですけど見つからなかった…ホントに書いたのかな?まあいいや。
倫理的観点に基づいて「心理臨床に携わる人間が何をしてはいけないのか」「心理臨床に関わる人間がどう行動すべきなのか」ってことは具体的に決めることって、本当は必要ないと思うのです。
「自分が誰のために、何のために今行動しているのか?」を考えれば、その場面場面でどう振る舞うのかっては自ずから決まってくるものだと思うのですよね。
例えば、自分が今受け持っているあるクライエントのことをブログに書くなんて(実名等の個人情報が明かされていないとしても)言語道断なわけですが、それって結局、そうすることがそのクライエントにとってプラスにならないってことを考えれば、わざわざ「~してはいけません」なんて言われなくても気づくはずです。
てか、それに気づかない人間は何を考えてるのか?って感じなんですが…
…なんてことを、この本を読んでふと思い出した次第。
女性心理療法家のためのQ&A 心理療法研究会 岡野 憲一郎 星和書店 2007-07 |
出版社のサイトの紹介文よりコピペ
あなたなら、どの治療法を選ぶ?
「これは困った!」という治療場面に対して、どのような対処法が考えられるのか?
心理療法家が治療中に体験する様々なとまどい、疑問についてお答えします。実際に困った場面であわてないためには、たくさんの対応の仕方を心に描いておくことが役に立ちます。そのため本書では、1つのQ(質問、疑問)に対してたくさんのA(答え、対応の仕方)を用意しました。ほのぼの笑える四コマ漫画付き!
四コマ漫画は今ひとつ笑えなかったりもしますが、おおむね妥当な(っつーか著者を見ればまともな本なのはわかりますわな)内容です。
「え,えっと…」 返答に困るQ&A
Q1 「私って何クサイですか?」と迫られたら?
Q2 患者さんがあれこれ質問攻めにしてきたら?
Q3 不潔恐怖の患者さんから握手を求められた!
Q4 終了間際に「最後に1つだけ,どうしても…」と言われたら?
Q5 引きこもりなのに「第二のイチロー」になる夢ばかり語られたら?「え~,そんなぁ…」 不満を言われたときのQ&A
Q6 「話すことはない」と患者さんがだんまりを決め込んだら?
Q7 「面接の終結が不満だ。確かに最初の目標は達成したけれど…」と言われたら?
Q8 「こんなにひどい扱いをされたことはありません。やっぱり前の先生のところに戻ることにします!」と言われたら?
Q9 「困った時にすぐに具体的に助けてくれない先生とは話したくありません!」と言われたら?
Q10 主治医への不満を並べられたら?
Q11 男性患者さんに「女には頼れない」と言われたら?
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…とまあ、ありがちな(そして結構困りそうな)質問が並んでおり、それぞれの質問に対する回答も非常にわかりやすく的確です。男性である私もおもしろく読めましたし、男性としても同じような質問をされた時にどう答えるべきかの参考には当然なります。
同じような内容(ありがちな質問に対する回答例)はこの本にも載っておりましたが
心理臨床家の手引 鑪 幹八郎 名島 潤慈 誠信書房 2000-12 |
それよりもさらに詳しい感じでグッドでございます。
…で、冒頭の倫理うんちゃらの話に戻るわけですが…
確かにいずれも困りそうな質問ではありますが、面接場面で何が起こっているのか、何を目標としてそのためにこれまで何をしてきたのかがはっきりしていれば(つまりアセスメントをきちんとして、見立てがしっかりとできていれば)、実はそれほど困る質問でもないのではないかと思ったりもします。
いや、「おまえはできてんのか?」と言われたら半笑いになってしまう俺ガイルわけですが、少なくともそれが必要であることはわかります。
この『女性心理臨床家のための~』は一問一答式で非常にわかりやすいがために「なんかわかっちゃったような気になっちゃう」危険性を危惧する次第であります。
もちろん、ちゃんと考えて自ら回答を導き出すことができるような人にとっては非常に有益な本でしょうし(でもそういう人に必要なのかな?)、私程度が危惧するようなことは踏まえた上で単なる一問一答で終わる本にはなっていないのだとは思います。
とりあえず馬鹿みたいに高い本ではないですし、気軽に読めちゃう内容ですので、気になる方は手に取ってみると吉。
ちなみに
「いざという時,頼りにしてます!」 スーパービジョンに関するQ&A
Q31 スーパーバイザーにドタキャンされたら?
Q32 スーパーバイザーを怒らせてしまった!
なんて辺りをぶっちゃけて書いてあるのはなかなかおもしろいかも。
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