先日、某学会の学会誌が届きました。その中に新しく就任した会長の挨拶が載っていたのですが、学会をとりまく様々な状況で重要なものの一つに「ネットやメールなどを介した研究の交流や情報の共有」について触れられていたのが印象的でした。
その仕事の中心が臨床実践であっても、あるいは研究であっても、今後ネット資源の利用はより重要度を増していくでしょうし、そしてネットを介した情報発信の機会も増えていくことでしょう。そんな中で臨床家・実務家・研究者一人一人の倫理だったり個人情報保護だったりに対する意識を高めていく必要があると思うのですよね。
そう考えると、psy-pubさんが既に指摘されていますが、donさんのように臨床実践に携わる人間(しかも大御所)がそうした問題について考える機会を「暇だなあ」の一言で片付けてしまうのはいかがなものかと思います。ご自身もブログを運営しているのに…ちょっと意識が低すぎるのではないでしょうか?
で、勘違いをされている方がいらっしゃるようなので、今一度確認しておきたいのですが、06/12/15のエントリ、キャリアカウンセリングってそんなんでできるの?や、06/12/16のエントリ、本当に「すごいこと」になっている自覚はあるのでしょうか?で問題になっているのは、件のブログ主がやっていることがカウンセリングか否か?ということではありません。彼がどう思おうと、あれはキャリアカウンセリングではなく、単なる就職指導でしょう。で、彼の表現の仕方、感じ方が悪いということも大した問題ではありません(当事者にとって重要な問題になる可能性は大ですが)。
真に問題なのは就職指導という業務の中で知り得た個人の情報(=学生とのやりとり)を(恐らく)学生には無断でネット上で公開していることなのだと思っております。
で、改めて個人情報保護や倫理に関する書籍をご紹介。売れ筋なのか元々の在庫が少ないのか、結構品切れ寸前の物が多いです。誰にとっても必要なものだと思いますので、持っていない方、ご注文はお早めに。
カウンセラーの倫理 松原 達哉 金子書房 2006-11 |
臨床心理学の倫理をまなぶ 金沢 吉展 東京大学出版会 2006-09 |
最近もご紹介したばかりですが、新しめの倫理関連の本2冊。上はかなりお手軽に読める感じです。下は現場で直面するであろう倫理問題を具体的に取り扱った良書。
これだけは知っておきたい個人情報保護 岡村 久道 鈴木 正朝 日本経済新聞社 2005-01 |
Q&A こんな時どうする? 個人情報保護 岡村 久道 鈴木 正朝 日本経済新聞社 2005-04-28 |
個人情報保護法に関して、とりあえずこの2冊は読んでおきたいです。件のブログ主にも是非読んでいただきたい。コンパクトにまとまっていて持ち運びにも便利。
必携!教師のための個人情報保護実践マニュアル―まず、おさえる編/学校行事編/実務編/資料編 角替 晃 成田 喜一郎 教育出版 2005-06 |
基礎からわかる学校の個人情報保護対策 川崎 雅和 松澤 幸太郎 学びの支援ネットワーク 学事出版 2005-12 |
当たり前の話ですが、個人情報保護というのは心理臨床の現場だけではなく、学校現場においても重要な事柄です。件のブログ主は学校関係者でしょうし、この辺もチェックしたいところですね。
個人情報「過」保護が日本を破壊する 青柳武彦 ソフトバンククリエイティブ 2006-10-17 |
やりすぎが会社を滅ぼす! 間違いだらけの個人情報保護 牧野 二郎 インプレス 2006-02-06 |
…とはいえ、何だか最近「個人情報保護がうるさいから」というのをやたらと振り回す人がいるのもまた事実(そういうのに限って、個人情報保護法をちゃんと理解していなかったりする)。そんな事例について考えるためにはこんな本も読んでみたいところです。
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ネット社会の中で自分がどう振る舞っていくのか、常に考えていくことが必要だと思います。自戒を込めて…ですね。
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