臨床心理学

【そろそろ】困ったオーダー【解説してみよう】

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先日の【勝手にトラックバック企画】困ったオーダーに解答してくださった皆様、改めてありがとうございました。採点基準の問題で色々コメントいただき放置されたままになっていたので、そろそろ解説してみたいと思います。なお今回の解説に関してはトラックバックにて解答いただいた方のみ参照したいと思いますのでご了承ください。


こんな問題を出題してみました。

【問題;30点満点】以下はある総合病院の精神科で臨床心理士に出された心理面接のオーダーに関する文章である。文章を読んで以下の問いに答えなさい。(なお以下の文章は事実に基づいてはいるが、プライバシーに配慮し、詳細は述べていない。また、一部内容についても大幅に改変してある)

ある日、某総合病院の精神科の臨床心理士R氏(以下R)が精神科外来に行くと、心理検査のオーダーを入れておく入れ物にオーダー用紙が入っていました。R氏はそれを見て大変驚きました。オーダー用紙には以下のように書かれていました。

患者名:○田○吉(86歳・男性)
臨床診断:適応障害・アルツハイマー型痴呆
検査名:カウンセリング
オーダー目的:家族がカウンセリングを希望しているため
備考:よろしくお願いします。

このオーダーを出したのはKという若い男性医師でした。この日、Kは他の病院での勤務の日であり不在でした。しかも、この患者がカウンセリングを受けるために来る予定になっていたのはまさにこの当日でした。

…結局、この日は無断キャンセルになったため(運良く)Rはこのオーダーに関して後日Kに直接断ることができたのでした。

で、採点基準で問題になったのは「診断」に関してですが、臨床上最も問題となるのは「アルツハイマー型痴呆の患者さんにカウンセリングは有効なのか?」というところではないでしょうか。
解答の中でこの点に触れてくださったのは灰色のたぬきさん、AFCPさん、みわごろさん、nobuさん、liedさんです。
AFCPさんの解答を見ると

この患者がいわゆるカウンセリングの適応となる可能性は少ないと思います。ただし『適応障害』の病名が本物であれば、なんらかの言語的精神療法の対象となる可能性も否定はできませんが。
たとえば86歳だが現役の会社役員で軽度の記銘力障害が出現、本人もそれを自覚しており仕事を続けるかどうかについて悩み、抑うつ的になっている。そのために残存している能力も十分に発揮できなくなっている…とか。こんなケースならカウンセリングに乗るのではないでしょうか。一種のモーニングワークですね。

とあります。少なくともアルツハイマー型の痴呆に対して言語的な、いわゆるカウンセリングが有効であるケースは極めて稀です。むしろみわごろさんの言うような認知機能リハビリテーションが有効であるとは思いますが、それもその痴呆に対する詳細なアセスメントが前提となります。これだけでいかにこのK医師が臨床的な妥当性を考えていないかということがうかがわれます。
さらに「家族が希望しているから」「カウンセリングをオーダーした」というところも大きな問題になります。ヨックタイさんは

専門家が適切な援助を選択するべきであって、家族が希望されたからといってはいはいと聞いていてはまずい。極論を言えば、統合失調症の患者さんのご家族が、「催眠やってください」と言ったらはいはいと言ってやるのでしょうか。禁忌です。

と述べられていますが、まさにその通りです。こう考えると「家族がうるさいから、丸投げしてしまえ」とK医師が思っている…と勘ぐってしまうのも仕方ないですよね(彼は実際、そう思っていたようですが…)。
「なぜそうすることが治療上必要なのか」あるいは「治療上必要ないのか」を考えることのできない人・説明することのできない人は心理臨床に関わってはいけません。その理由はみなさんわかりますよね?でも、それができない人というのは意外に少なくありません(こんな例もあります)。こうした事態というのはいままで心理臨床分野の教育の中で研究が軽視されてきたことと無関係ではないと私は思います。そして(恐らく)研究の重要性を軽視した医療心理師の資格が主流となったら…どうなるんでしょうね?

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