臨床心理学

【なんか】こんな状況じゃ開業もアリ…だけど4【誤解されてる?】

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私は「経験年数に基づいて心理職の開業を規制せよ」とは一言も言ってませんが、何か?
あ、このシリーズの過去ログ未読の方はまずそちらからどーぞ。
【臨床心理士の】こんな状況じゃ開業もアリ…だけど1【惨状】(06/06/02)
【開業の】こんな状況じゃ開業もアリ…だけど2【条件とは】(06/06/05)
【一番】こんな状況じゃ開業もアリ…だけど3【怖いパターンは】(06/06/06)
あと、トラックバックいただいておりますのでそちらもどぞー。
[心理学小話][時事問題]開業臨床心理士 雑感さいころじすと日記
臨床心理士雑感LIFE IS NOT ENOUGH. Shit!!!!
トラックバックいただいたエントリなどを元にして、私の考えをまとめていきたいと思いますよ。


お二人とも共通しておっしゃっているのは、私の書いた

それよりも何よりも「クライエントに迷惑をかけないこと」が一番なんじゃないですかね?

ってのが「当たり前すぎる話である」ということでした。へなちょこ心理士さんからはエントリで、takashiさんからコメントにてそういったご意見をいただいております。
そうですね。確かに当たり前すぎる話です…が、私が言いたいのは安易な開業によってその当たり前の前提が損なわれる可能性があるのではないか?ということなのですよ。
エセラー(=エセ・カウンセラー)だろうと臨床心理士の資格を持っていようと、能力のない人間が開業したら一番迷惑を被るのは関わってしまったクライエントですよね。これもまた当たり前です。
で、takashiさんのおっしゃっている

SCなどに典型に見られるような「受身」姿勢ではなく、「打って出る」とか「開拓していく」姿勢が求められます。そう、ガンガン開業していけばいいかと。

ってのを真に受けて、能力のない人間が開業してしまったらどうなります?そんな能力のない人間のところに行くクライエントなんていない…とは言い切れないですよね。これだけエセラーが跳梁跋扈している現状では。で、結局、能力のない人間の被害を被るのはクライエントですよ。
もちろん、takashiさんの言う

要は「ダメな奴には辞めてもらう」ってことを徹底することこそが本来必要なことかと思います。

ってのには激しく同意なのですが、ダメな奴が開業して被害者が出てからでは遅いんじゃないかと思います。つーか、前回も書きましたがSC同様、サポート体勢がないために被害者が出やすいということこそが、開業臨床の難しいところだと思いますよ(…ってのは伝わっておりますでしょうか?)。被害者が出やすい構造だからこそ、開業には慎重になる必要があるのではないでしょうか。
それとも「臨床心理士の地位の向上のためには、少しくらいクライエント側に犠牲者が出るのはやむを得ないんだ!」とでも言いますか?まさかそんなことは言わないですよねえ?
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takashiさんは

「エセラーはガンガン開業」、「臨床心理士は開業に慎重」というのが特徴的な現象ですが、これがやはり、エセラーを増長させてきましたし、彼らの地位も悲しいかな上げてしまっています。世間一般の心理学に対する誤解・偏見を作ってきたとも言えます。開業相談機関に行ったときに、“臨床心理士よりもエセラーに当たる確率が高い”というのは極めて不幸な状態ですね。

と書かれておりますが、「エセラーはガンガン開業」「臨床心理士は開業に慎重」という現象がなぜ生じているか、その原因について考えたことはありますか?
これは私の仮説でありますが(とは言え、かなり確信は持っているのですが)、「エセラーは自分の能力の把握ができていない」こと、そして「エセラーは自分がクライエントに迷惑をかける可能性を考えることができない」ことがそうした現象を作り上げる大きな要因になっているのではないでしょうか。
で、「臨床心理士もガンガン開業を!」的な風潮を作り上げてしまったとしたら、同じような構造になってしまうのではないですか?「自分の能力を把握できない臨床心理士」「自分がクライエントに迷惑をかける可能性を考えることができない臨床心理士」が「ガンガン開業」するような状況になったりはしないでしょうか?(今のSC志望者を見ているとそういう危惧は捨てきれないのですよね)
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もちろん能力のある人が開業するのは全然オッケーだと思うのですよ。私はネット上でしかtakashiさんのことは存じ上げないので、takashiさんがどの程度の臨床能力を持った方なのかはっきりとはわかりませんが、おっしゃっている内容を読む限りではきっと能力の高い方なのでしょう。たぶん。おそらく。
でもね、世の中の臨床心理士がみんなtakashiさんみたいに能力の高い人ばかりじゃないんですよ
みんながみんな能力の高い人なのであれば「ガンガン開業」を推奨するのもアリなんでしょうけど、現状はそうではないのはtakashiさんもご存じですよね?そういうことを考えると、開業に対しては慎重にならざるを得ないのではないかと思うのですよね。
え?私ですか?私は自分の能力はわかっているつもりなので開業は考えないですし、まして「ガンガン開業」を推奨するなんて大それたことはできません
まあ、そうせざるを得ない状況になったらそりゃ考えるかもしれませんけどね。でもキツイだろうなぁとは思います。「だったらエセラー紛いのことをしてた方がお金にはなるし楽だろうなぁ」とか考えてしまうかもしれません。
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あ、あとへなちょこ心理士さん

確かに、臨床能力の有無(高低か?)は経験年数の長さに依存する面もあるかもしれませんが、経験が長かろうと短かろうと、使えないものはつかえんのです。逆立ちしようと何をしようと。
もし、そのことで何らかの不利益が別の臨床心理士(あるいはnotエセカウンセラー)に降りかかることがあった場合、逆に言えばその程度でしか臨床心理士(特に不利益を被ったor被ると主張する人)の社会的信用がないor社会的信用を得ているという実感がない、ということにもなるかと思います。

このエントリの冒頭にも書きましたが、私は「規制する必要がある」とは言ってますが「経験年数で規制せよ」とは一言も言ってませんよ。私も経験が長かろうと短かろうと、使えないものは使えないと思っていますよ。
で、くり返しになりますが、業界団体への不利益は当然返ってくると思いますが(だってその程度の社会的信用ですもん)、使えない人間が開業して一番不利益を被るのは結局クライエントです。
takashiさんは「クライエントを守るシステム」「クライエントを救済するシステム」として職能団体に訴えることができることや「損害賠償保険」の話をされてますが、そういうことが起こってしまった時点で既にクライエントには迷惑がかかっているわけじゃないですか。私が言っている「規制する必要がある」というのは、そういう事態を未然に防ぐ必要があるということなのですよ。
ちなみにお偉いさん方が提示している「開業の定義」がナンセンスであるというのは激しく同意です。
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なんだか私の表現が稚拙なために誤解をされてしまったところもあるかもしれません。わかりにくくて申し訳ありませんでした。また不明な点などありましたらご指摘ください。
…結局この問題って「臨床心理士の資格を取りにくくする」とか「臨床心理士資格更新の条件をもっと厳しくする」ってだけで割と簡単に解決する話のような気がしますけどね(まあ、それができないから困っているのだけれど)。

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