臨床心理学

きのこさんの質問に答える

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06/06/14のエントリ、院試の英語対策って…で「高校3年生の女の子」のきのこさんからこんなコメントいただきました。

こんにちは。私は高校3年生の女の子です。
今、自分がカウンセリングを受けていることもあって、心理学に興味を持ちました。
大学に進学して心理学を学びたいなぁと思っています。
そこで質問なのですが、病院に就職したり、スクールカウンセラーになるには、やはり臨床心理士の資格が必要なのでしょうか?
臨床心理士の資格は指定の大学院を修了して試験を受けないと取得できないんですよね。
私の家はそんなに裕福ではないので、大学院まで行けるかわかりません。
大学で取得できる認定心理士や、認定心理カウンセラーの資格だけで精神科やスクールカウンセラーとして働くことはできないのでしょうか?
あと、臨床心理士と精神保健福祉士はどう違うのでしょうか?
精神保健福祉士の資格は大学卒業によって受験資格が得られるんですよね。
大学院に行けるかどうかわからないので、臨床心理士が無理なら精神保健福祉士を目指そうと思います。
臨床心理士を目指す学部と精神保健福祉士を目指す学部が違うので、とても悩んでいます。
質問の答えと、何かアドバイスあったら、よろしくお願いします。

えーと…基本的な話なんですが、意外に当ブログでは扱ったことのない話だったりするので、答えてみたいと思いますよ。
とりあえず、臨床心理士と精神保健福祉士の違いについては、この本なんかを参照していただけるといいんじゃないかと…私、ロテ職人のインタビューも載ってるYo!

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正に高校生向けの資格本だと思います。「きれい事は、一切抜き」のキャッチフレーズ通り、「やりがい」「収入」という、皆様が一番知りたいところの本音の部分が書かれておりますよ。マヂお薦めです
…って本を紹介するだけでも何なので、簡単に答えてみたいと思います。

病院に就職したり、スクールカウンセラーになるには、やはり臨床心理士の資格が必要なのでしょうか?

大学で取得できる認定心理士や、認定心理カウンセラーの資格だけで精神科やスクールカウンセラーとして働くことはできないのでしょうか?

基本的には臨床心理士の資格があった方がいいです…というか、文部科学省の補助事業のしてのスクールカウンセラーは原則として臨床心理士資格保持者のみです(「準ずるもの」というのもありますが)。スクールカウンセラーも色々と問題がありまして…その辺は当ブログのスクールカウンセラー関連エントリを昔のものからお読みいただけたらと思います。
ちなみに精神科など医療系の職種も求人は少ないですし、「常勤職が極めて少ない=アルバイトと一緒」だったりします。
学部卒で取得できる認定心理士という資格は、単に「大学で心理学を学びました」という証明でしかなく、職業に繋がるものではありません。
「認定心理カウンセラー」という資格は存じ上げませんが、基本的にこの手の民間資格は手を出さない方がいいと思います。臨床心理士も就職という面では悲惨ですが、専門学校などで取れる資格はまず職業に繋がらないと思っていた方がいいです。
「裕福でないから大学院まで行けるかわからない」というのであれば、各種奨学金もあります。ある程度能力があれば、奨学金は取れると思います。逆に、奨学金も取れないレベルなのであれば、はっきり言ってあきらめた方がいいでしょう。これから臨床心理士資格保持者はどんどん増加しますが、就職先はそうそう増えたりしません。つまり、状況はどんどん厳しくなっていくわけです。そういった厳しい競争の中で就職先を勝ち取るには、やはりそれなりの能力は必要なわけです。それを考えれば奨学金をとる位はたいしたことではありません。

臨床心理士と精神保健福祉士はどう違うのでしょうか?

ものすごく簡単に言ってしまえば、臨床心理士は臨床心理学的手法に基づいてクライエントを援助するのが仕事です。それに対して、精神保健福祉士は社会福祉的な視点に基づいて精神障害者の社会復帰を援助するのが仕事になります。
もちろん臨床心理士も現実的な援助の視点は必要だし、精神保健福祉士もカウンセリング技術などは必要だったりと重なる部分もありますが、基礎となる考え方が違うわけで、当然仕事内容も違ってきます。
ちなみに精神保健福祉士も就職環境は厳しいですが、臨床心理士よりはまだマシなはずです。国家資格だし。
あとアドバイスですが…

今、自分がカウンセリングを受けていることもあって、心理学に興味を持ちました。
大学に進学して心理学を学びたいなぁと思っています。

もし本気で対人援助職に就こうと思ったら、まず自分の問題はある程度解決してからにしてくださいね。
既にご理解いただいていることかもしれませんが、対人援助職というのはそれなりにしんどい仕事ではあります。他者を援助していくということは、ある意味では自分を見つめ続けるということにも繋がります。それが出来ていないと独りよがりな援助になってしまう可能性は十分あるわけです。そして他者を援助するというのは、ある程度重い責任を負うことでもあります。それに耐えられますか?
「やりたいから!」とか「やる気はあります!」というだけでできる仕事ではありません。それなりに能力がある人じゃないとやってはいけない仕事だと思います。ある意味では人の命を握っている仕事なわけですから
それを承知の上でまだやりたいというのであれば、個人的には応援したいと思います。でも、個人的には能力のない人にはなってもらいたくありません。
…とこんな感じでいかがでしょうか?
また不明な点などありましたらご質問いただけると幸いです>きのこさん&皆様

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