資格問題

奈良県臨床心理士会のウェブサイトに掲載されてる「心理士の国家資格化と日本臨床心理士会の動きについて」も読んでみよう その2

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ここまでの内容で既に言いたいことはほぼいいつくしてしまった感もありますが、一応最後までやっておかねば…ということで続きです。過去ログ未読の方はまずはそちらから。

奈良県臨床心理士会のウェブサイトに掲載された「緊急・国家資格化に向けて鳥取県から」を読んでみた その1(12/05/23)
奈良県臨床心理士会のサイトから「緊急・国家資格化に向けて鳥取県から」の文章が削除されている件(12/05/28)
奈良県臨床心理士会のウェブサイトに掲載された「緊急・国家資格化に向けて鳥取県から」を読んでみた その2(12/05/29)
奈良県臨床心理士会のウェブサイトに掲載された「緊急・国家資格化に向けて鳥取県から」を読んでみた その3(12/05/31)
奈良県臨床心理士会のウェブサイトに掲載されてる「心理士の国家資格化と日本臨床心理士会の動きについて」も読んでみよう その1(12/06/07)

今回で何とか終わりに…できるかなぁ…。がんばってみましょうかね。

引き続き取り上げるのはこちらの文章。

お知らせ[心理士の国家資格化と日本臨床心理士会の動きについて]|奈良県臨床心理士会

前回も触れたこの文章についてのいくつかの疑問点、つまり

このブログを読んでらっしゃる方の中に奈良県臨床心理士会の会員の方はいらっしゃいますか?その方々はあの文章が掲載されることを事前にご存じでしたか?現時点では「個人的意見である」と明言されていますが、それを踏まえた上で、現在あの文章が掲載されていることについて、疑問に思われる方はいらっしゃらないのでしょうか?

奈良県臨床心理士会の場合は、誰か会員の方が「自分の文章を載せたい」と希望を出せばサイトに掲載してもらえるのでしょうか?その場合、どんな手続きを踏む必要があるのでしょうか?ついでに言えば、どんな手続きを踏んで山崎氏はあの文章を掲載できたのでしょうか?

これらの点については未だに明らかになっておりませんので、何か情報をもってらっしゃる方がいたらコメント等よろしくお願いします。

さて…

2012年4月21日、この4団体の会議の席で、「大学院協議会」が以下の提案を行いました。

これに対し、「日本臨床心理士会」は「このような提案は承認できない」と拒否しています。

とありますが

1.臨床心理士の活動は臨床心理学及び関連諸領域の学問等の進歩と指定大学院・専門職大学院の教育課程の整備・充実が結び付いて発展してきた。
2.臨床心理士資格は大学院教育を修了した高度専門職業人としての臨床心理職の質の向上と汎用性の担保が目指された資格である。
3.臨床心理士は長年積み重ねてきた社会への貢献の実績により、すでに多くの公的な機関の任用資格になっており、公共性と国民の信頼を得ている。

…これ「提案」ではないですよね?

臨床心理士養成大学院協議会(以下、臨大協)による「国家資格についての基本姿勢と提案」(pdf)を読めばわかりますが、上記の3点は「確認」であり、それを踏まえた上での「提案」の内容は以下でしょう。

1.国家資格のための大学院カリキュラム案の検討。
2.国家資格に関わる大学院における指導者研修。
3.国家資格に関わる大学院(その前段として、現段階では、臨床心理士養成のための専門職大学院・指定大学院)修了者の専門性を生かした、実効性のある就労先確保対策の検討。

日本臨床心理士会が上記「確認」について「承認できない」としたのであれば、それはこれまでの臨床心理士の歴史を否定する、いわば「自己否定」につながりかねない事柄でしょうけれども、上記「提案」について「承認できない」のは「そりゃそうだろうなあ」と思います。

だって、まだ資格の骨子も固まっていない状態で、他の関連団体の意向を無視した形で「カリキュラム案」「指導者研修」「就労先確保対策」なんてのが検討されるなんて、それこそ総スカンを食らいかねない行為であると言えるでしょう。そりゃ承認できませんわ。

しかし、奈良県臨床心理士会の山崎修氏がこの「提案」の具体的内容について触れていないのは何なんでしょうね?いくつかの仮説は容易に立てることができますが、なんというかこれは意図的にミスリードを誘ってると思われても仕方ないんじゃないでしょうか。

で、その後です。

日本臨床心理士会は現状での心理士資格の国家資格化によって引き起こされるデメリットについては一切の言明を避けていますが、以下のような可能性もないとはいいきれません(あくまでも個人的な推測です)。

はい。その通りです。確かに「可能性もない」とはいいきれないでしょうね。

1、スクールカウンセラーは廃止されるかもしれない。もし存続しても校医(精神科医とは限りません)の指示のもとでしか動けなくなるかもしれない。
2、これまでのようなスタイルでのカウンセリングはできなくなるかもしれない。
3、臨床心理士が行ってきた災害時の心理的支援は不可能になるかもしれない。
4、医療以外での臨床心理業務や開業はできなくなる可能性がある。
5、大学卒ベースになるので病院における賃金は低下する恐れがある。つまり、今以上に生活の保障がなくなる。

これらの事態を防ぐ方法は臨大協が目指すところの「臨床心理士の国家資格化」しかないのでしょうか?他の方法はないのですか?

この辺については12/05/15のエントリ、日本臨床心理士養成大学院協議会が目指しているのはいまだに「臨床心理士の国家資格化」らしい件なんかも読んでいただければと思うのですが、臨大協は未だに「臨床心理士の国家資格化」に固執(あえてこの言葉を使います)しています。そのことが関連団体、具体的にはいわゆる「3団体」のうちの残りの2つ、医療心理師国家資格制度推進協議会、日本心理学諸学会連合の反発を招く「可能性が高い」ことには気づいていないのでしょうか?

奈良県臨床心理士会のサイトから「緊急・国家資格化に向けて鳥取県から」の文章が削除されている件で12-06-10 (日) 21:20付けで“まほりん”さんからいただいたコメントの中に、同エントリにコメントいただいた“つなで”さん宛にこんな言葉がありました。

現場のことが大学や大学院のポリティクスに大きく影響されるぎることはよくないという意見には、全く同感です。
ところで、心理師資格設立に、そのようなポリティクスが持ち込まれていないと、本当にお考えでしょうか?

勝手につなでさんの言葉を代弁してしまいますが、つなでさんは「ポリティクスが持ち込まれていない」とは思っていないでしょうね。その証拠につなでさんは

私個人としては、現場のことが、大学や大学院のポリティックスに大きく影響されすぎることは良いとは思っていないです。

と書いています。わかります?「大きく」影響され「すぎる」ことは…と書いているんです。

だいたい「国家」資格創設の話になっている時点で、もうその話は政治的な話なのですよ。そこに大学や大学院のポリティクスが持ち込まれないなんてあり得ない話でしょう。そりゃあ既得権益の確保だったり、あるいは大学経営の問題だったり、色々どろどろしたことも出てくるでしょうよ。

しかし魑魅魍魎が跋扈する政治の話の中で「臨床心理士の国家資格化」にこだわるのは果たして現実的な話なのでしょうか?そこにこだわること言うのであれば、それを「ポリティクス」というのはあまりにも稚拙にすぎるのではないかと私は思います。

繰り返しになりますが、こうした可能性が考えられるのであれば、その可能性について「隠蔽」している日本臨床心理会を批判するよりも、どうすればそうした事態を防ぐことができるのかという「現実的な」対策を考える必要があるのではないでしょうか?「臨床心理士の国家資格化」などという現実離れした考えに固執するのではなく、です。そして、それがこれまで臨床心理士の歴史を築き上げてくださった諸先輩方の努力に報いることに繋がるのではないかと私は考えます。

長くなってしまいましたが、この件についてエントリとして取り上げるのはとりあえずこれで終了にしたいと思います。もちろん、コメント欄等でもやりとりは続けていただきたいと思いますし。

ただ、未だに棚上げされた問題もあります。繰り返しになりますが、奈良県臨床心理士会のサイトの「私物化」の可能性についてです。

もしも、サイトに文章をアップするための手続きが明確化された上で、さらに今回取り上げた山崎修氏の文章に対する反論なんかが奈良県臨床心理士会のサイトに掲載されるようなことがあるのであれば、私は「山崎修氏が奈良県臨床心理士会のサイトを私物化している」などと言うつもりは全くないんですけど。少なくともどうすればサイトに文章を載せられるのかを会員に知らせることくらいはしてないと「私物化」と言われても仕方ないでしょう。

あるいは私は当該心理士会の会員ではないですし、会員の皆さんにはその辺は周知されているのかもれませんが。

ともあれ、引き続きの議論および情報提供よろしくお願いいたします。

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