臨床心理学

抑うつ傾向および学校不適応と食行動の関連?

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これまでの「食育」関連のエントリ、実はこのエントリの枕だったのでした。
「食育」が気になる
「食育」が気になる その2
『心理臨床学研究』を閲覧できる環境にある方は、是非とも元論文も一緒に見ていただけたらと思います。
○○○○○ 2005 中学生の抑うつ傾向および学校不適応傾向と
 食行動の関連 心理臨床学研究, 23(3), 350-360.
(※著者名は伏せ字にしてあります)

この研究では食事の質を測定する中学生版食品摂取頻度調査票、および食行動尺度を作成し、「学校不適応傾向」尺度(「孤立傾向」尺度、「反社会的傾向」尺度)および「抑うつ傾向」尺度と併せて公立中学生に実施した。
食行動尺度の因子分析により、「食卓の雰囲気」(「食卓は楽しいと感じる」など)、「食の安全性に関する知識・態度」(「食べ物を買うとき、賞味期限を見る」など)「健康を意識した食品摂取」(「嫌いなものも、健康を考えて食べるようにしている」など)の3因子が抽出された。
「孤立傾向」「反社会的傾向」「抑うつ傾向」について食事の質上位・下位群それぞれの平均値の差を検討したところ、「抑うつ傾向」で有意な差が認められ、食事の質下位群の方が上位群より高かった。このことは、食事の質が「抑うつ傾向」など情緒的側面と関連することを示しており、食事の質を良くすることで情緒の改善が促される可能性が示唆された。

まあ、質問紙作成の手続きとかについても言いたいことはありますが、それはおいといてこの考察は…

…ほんとにそうか?

続けて「学校不適応傾向」と食事の質の関連が見出されなかったことについて、筆者はこう考察しています。

斉藤ら(1998)によると、従来、医学や栄養学分野で、精神障害、発達障害、問題行動などが特定の栄養素の欠乏によるのではないかという仮説のもとに研究がなされてきたが、そのほとんどは否定的な結論となっている。

まあねぇ…そんな簡単に結果は出てこないでしょうねえ。

今回の結果は、食事の質と「学校不適応傾向」などの行動との間には、直接的な関連性が見られないというものであり、従来の知見を支持するものと言える。今後は、食事の質の低下を生み出す親の価値観や、家庭環境の要因などについても、さらに検討されることが望まれる。

と書いていますが、これは「抑うつ傾向」についても言えることであり、やはり食事の質の低下を生み出す家庭環境の要因などは考慮する必要があるでしょう。…と考えると

食事の質を良くすることで情緒の改善が促される

とは単純に言えないのではないでしょうか?
続けていきます。

「食行動」の三つの尺度得点を説明変数、「孤立傾向」「反社会的傾向」「抑うつ傾向」それぞれの尺度得点を目的変数として重回帰分析を行った結果、「食卓の雰囲気」は「孤立傾向」、「反社会的傾向」、「抑うつ傾向」を予測し、「食の安全性に関する知識・態度」は「反社会的傾向」を予測することが明らかになった。

これ、強制投入法でやってるんですが、ステップワイズだったらどうよ?ってツッコミはともかくとして…まあ、なんとなく納得できる結果ではありますな。で、「食の安全に対する知識・態度」と「反社会的傾向」の関連について筆者はこう考察してますよ。

また、「食の安全に対する知識・態度」は、親の食への意識の高さや子への配慮を反映するものであり、それらが乏しい家庭環境においては、子の「反社会的傾向」が生じやすいことを表しているものと解釈される。

…これ、逆じゃダメなんですかね?「反社会的傾向」の高い中学生が「食の安全」に対して興味持つか?って感じがするんですけど。
さらにこの研究では清涼飲料水の摂取頻度と朝食の欠食状況についても調査しており、清涼飲料水の摂取頻度が多い生徒は「孤立傾向」や「反社会的傾向」が強く、朝食を欠食する生徒には、「反社会的傾向」が強いことが示されています。
で、まとめと今後の課題ではこう述べていますよ。

以上の研究から、今後教育現場において、生徒の「抑うつ傾向」や「学校不適応傾向」に対する取り組みの一環として、食行動の要因が考慮されることが望ましいと考える。

…え?

「親の価値観や家庭環境の要因などについても、さらに検討されることが望まれる」ってこの前で言ってませんでしたっけ?その辺を無視して、中学生に対して食行動を語っても何も意味がないと思うんですけど。

具体的には、スクールカウンセラーが、個別面接のなかで食行動にkなするチェックリストを補助的に取り入れるなどして、生徒の食行動を改善し、食に対する意識が変わるよう援助することも有効であろう。また、教師や親へのコンサルテーション、学年集会、保護者会などにおいて、不登校の予防的活動の一環として、食行動を取り上げることも意味があると思われる。

結局、これが言いたかっただけちゃうん?

てか、スクールカウンセラーって、他にもっとやらなきゃいけないこと、山のようにあるんじゃないですか?
さらにさらに…

さらに、不登校生徒ができるだけ給食を摂取できるような環境を整えるため、教育相談部会などで管理職・教師・スクールカウンセラー・相談員・養護教員らが具体的な流れを決め、学校全体の協力体制のもとで、生徒の健全な食生活を支援していくことが必要であろう。

給食=健全な食生活ですか?

給食食べりゃあいいってもんでもないと思うのは、私が学校臨床について知らないからでしょうか?
てか、これホントに査読したんですか?…と私なんかは思ってしまうんですけどね。
勘違いしていただきたくないのは、私は「家庭に問題がある」と言いたいわけではないというところです。そうではなくて「食事の問題を解決したところで、何ら根本的解決には繋がらないのではないか?」「食事の問題以前に、もっと他にやらなきゃならないことが山のようにあるのではないか?」ということを言いたいのであります。
皆さんどう思いますかね?『心理臨床学研究』を閲覧できない人からは、細部に関する質問もお受けしますよ。私が答えられる範囲で回答したいと思います。
…てか、私も大した研究はできてないんで人のことは言えませんが、よくこん(以下自主規制

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