資格問題

新潟県臨床心理士会のサイトにある「日本臨床心理士会との意見交換報告」を読んでみた その2

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昨日のエントリ、新潟県臨床心理士会のサイトにある「日本臨床心理士会との意見交換報告」を読んでみた その1の続きです。未読の方はまずはそちらから。

あと前提として、昨日のエントリで取り上げている鳥取県臨床心理士会による「情報提供のお願い」についてもご参照ください。そちらについて私の意見はほぼ出尽くしています。鳥取県臨床心理士会(の恐らく一部の方々)が危惧されているのは全て「可能性がある」ということであり、言い換えれば「可能性がないとは言えない」ということなのですよね。

心理職の国家資格にまつわる問題は、既に臨床心理士会という一つの職能団体が抱えるだけのものではなく、各心理学系、他隣接職種の職能・学術団体、さらには立法府も含めた「政治問題」になっているという認識を持たねばなりません。

それは決して、自分たちの意見・考えを表明することを禁じているということを意味しているのではありません。むしろより良い資格になるよう、自分たちの意見は積極的に表明していかなければならないと私は思います。

ただ、自分たちの意見・考えを表明するということは、自分たちの既得権益を守るということとイコールでもないのです。

譲らなければいけない場合は退く必要があるし、どうしても退くことが出来ない部分については意見を戦わせていくという非常にシンプルな話なのではないでしょうか。恐らく後者は「クライエントの利益・権利を守る」ということであり、そのためには自分たちの既得権益の全てが守られるということはあり得ないわけです。

だからこそ心理職の国家資格の確立を目指す「一団体」としての日本臨床心理士会は、他団体に配慮した上で「可能性がある」「可能性がないとは言えない」という、見方によっては歯切れの悪い表現しか用いることができないのです。

…と私の言いたい結論はほぼ言ってしまったわけですが、これで終わってしまうのは何なんで、そろそろタイトルにある「意見交換報告」を見ていきましょうか。

日本臨床心理士会との意見交換報告(※pdf注意)(新潟県臨床心理士会

とりあえず、先に「鳥取県臨床心理士会との共同質問」の部分を見てみます。

鳥取県臨床心理士会との共同質問

共同質問1 仮称心理師案の資格の中身はどうなっているのでしょうか?
共同質問2 日本臨床心理士会が臨床心理士を国家資格化することを放棄した理由は何なのでしょうか?

1については、資格の中身が明確ではありません。それでいて都道府県臨床心理士会に協力を求められても混乱し、懸念を深めるばかりです。すでに、心理職(仮称心理師)推進を公にしている以上、資格の中身についてしっかり説明していただく必要があります。

2については、そもそも一部の医療団体からの反対があったから臨床心理士の国家資格化を放棄したのでしょうか?もし、医療団体からの反対があったから放棄したというのなら、その時の反対理由が同時に心理職(仮称心理師)に反対する理由にもなっているはずですが、何か違うでしょうか?もし、心理職(仮称心理師)に対して医療団体からもはやかつてのような反対が起こらないようなら、今からでも臨床心理士の国家資格化は十分に可能だということになります。それなのに、臨床心理士会は、なぜ臨床心理士の国家資格化に反対するのでしょうか?

…まだこんなことを言ってる人がいるんですね…。

これに対する日本臨床心理士会の返答は

次に、鳥取県臨床心理士会との共同質問に関して伺ったところ、鳥取県とも話し合いを行った後、改めて回答するので、今回は回答保留とのことでした。

だそうです。

そりゃそうでしょうね。不用意に変なことを言ってしまって、言質を取られたら大変なことになってしまうでしょうから。「回答保留」にしておくのが正解でしょう。対応された日本臨床心理士会の野島資格法制化プロジェクトチーム代表、奥村専務理事、平野常務理事、グッジョブ!です。

というか、この「共同質問1」については「これから各団体と協議して決めるところだから回答できない」でしょう。そもそも国家資格化推進そのものが「資格の中身を決めること」であり、資格の中身が明確ではないことを理由に「協力を求められても混乱し、懸念を深めるばかり」なのであれば、そりゃあずっと混乱し、懸念してるしかないですわな。

上に挙げたように少しでも良い資格になるように、自分たちの意見を言っていくことが「協力する」ということなのではないでしょうか。そして、これも繰り返しになりますが「良い資格になる」=「自分たちの既得権益が守られる」では当然ないです。あくまでも「クライエントの利益になる」のが「良い資格」です。そう考えれば、混乱・懸念してる場合ではないということが理解できないもんですかね?

問題は「共同質問2」ですかね。

そもそも一部の医療団体からの反対があったから臨床心理士の国家資格化を放棄したのでしょうか?もし、医療団体からの反対があったから放棄したというのなら、その時の反対理由が同時に心理職(仮称心理師)に反対する理由にもなっているはずですが、何か違うでしょうか?もし、心理職(仮称心理師)に対して医療団体からもはやかつてのような反対が起こらないようなら、今からでも臨床心理士の国家資格化は十分に可能だということになります。それなのに、臨床心理士会は、なぜ臨床心理士の国家資格化に反対するのでしょうか?

この部分。完全にストーリーが出来上がっちゃってません?自分で仮定して、その仮定に基づいて自分で答えてしまってますよね?

その仮定部分。「一部の医療団体からの反対があったから臨床心理士の国家資格化を放棄したのでしょうか?」に関しては、恐らく「それもあるけど、それだけじゃない」というのが正解だと思います。「一部の医療団体」以外との間での様々な調整も必要になったため「臨床心理士の国家資格化は不可能」なのでしょう。

つまり「一部の医療団体からの反対があったから臨床心理士の国家資格化を放棄した」という仮定が崩れているので、その後の部分は成立しないってことでいいんじゃないですか?

しかし…こういうこと言う人たちって「臨床心理士の国家資格化」はもう不可能だというのがわからないんですかね?それともわかってて嫌がらせのために言ってるんでしょうかね?どちらにしても、個人的におつき合いしたくないタイプの人間だということだけはわかります。

さて、また長くなってしまったので、今日はこれくらいにしておきましょうか。

また明日にでも続きを書きたいと思いますよ。

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