07/03/30のエントリ、心理学バカの元ネタを提供してくださったみやこさんからコメントいただいたのですが、その中で気になった部分がありました。
こんなことを考えるようになったのは、おそらくカウンセリングルームで働き始めてからだと思います。
その職場には20名ほどのカウンセラー(臨床心理士資格の有無は様々。全員が海外の心理系大学院修了者です)がいてクライエントさんが自由に担当のカウンセラーを選べるシステムになっています。
そこでクラークとして事務処理をしていてわかってしまったのが、、「社会人経験の有無」で、クライエントさんのリピート率が全く違うということなのです。(そもそも導入の時点で、「社会人経験のある方を」と指名・指定してくるお客様も少なくありません)。
コメントの内容に対する返信はとりあえずおいといて、実は最近、リアル知り合いからもこういう「クライエントが担当カウンセラー・治療者を選べるシステム」について聞いておりまして…
そんなわけで思ったことを少し。
実際のところ、そういうシステムってどうなんでしょう?
一見、「ユーザーの希望に沿った」的な良い制度である感じがしないでもありませんが、裏を返せば「クライエントの自己責任で」ってことになっているんじゃないですかね?つまり「相性が合わなくても、それはあなた自身が選んだわけで」「もし気に入らなかったらここでの面接を止めるか、他のクリニックを探してね」ってことになってしまうのでは?
そしてそれに関連した問題として、「クライエントはどういう基準で選べばいいの?」あるいは「どういう基準で選んでるの?」というのがあります。
カウンセラー・治療者側にある程度のプレゼンテーション・自己紹介の機会が与えられているとしても、そこでどの程度のことがわかるのか?ということです。結局、そこでわかるのは表層的な要素、つまり持っている資格だったり、これまでの経験だったり、社会人経験だったり、接客(これは臨床的な力量とはまた別の問題だと思います)技術だったり、あるいは外見だったりするかもしれません。
で、持っている資格が何であろうと、どれだけ立派な経験を積んでいようと、ぶっちゃけ下手な人は下手でしょう。社会人経験の有無や接客技術、外見なんてのは臨床実践の力量とはあんまり関係ないような気がします(接客技術や外見は程度問題ではありますが…あんまりひどいのはダメですよ)。
でも本来重要なのは、そのクライエントに対するある程度妥当なアセスメント・見立てと、それに基づく治療者の選択なのではないかと思います。
それなりにちゃんとした大学院であれば、大学院の養成期間でもある併設の相談室で担当者を決める際には、ちゃんとインテーク面接をやった上で指導教員なりスーパーヴァイザーなりがカンファレンスを行ってケースの割り振りをしていることでしょう(ですよね?)。
また、うろおぼえな話で申し訳ないのですが(ソースも失念しておりまして…そんなわけで間違ってたらツッコミぷりーず)、確か米国のメニンガー・クリニックなんかではかなりガッツリとアセスメントを行った上で、それに基づいて治療者を決めるのが原則ってことになっていたはず。
患者・クライエントが自身の状態を全く把握できないなんてことはありませんが、でも主観的な訴えを踏まえた上での客観的なアセスメントは必要でしょう。それなしでは相性なんてわかるはずもないし、担当者も決められないと思うのです。
…と考えると「クライエントが担当カウンセラー・治療者を選べるシステム」ってのは、当のクライエントにとってはあんまり良いシステムであるとは思えないのですよね。恐らく自費でそれなりに高いお金を取るならなおさら。長所を挙げるとしたら…面接開始当初、一時的にはクライエントが満足できるかも…ってことくらいでしょうか。
少なくともクライエント側としては長所よりも短所の方が圧倒的に多いような気がしてならないのですが、いかがでしょうかね?>皆様
患者さまが集まるポイント90―はやるクリニックをつくるイメージアップ大作戦 倉治 ななえ 日本医療企画 2001-11 |
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