食育

食育が気になる その8-「三角食べ」の真実-

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偏食とか栄養学とか食育とか、何だか食べることばっかり書いている当ブログ、いっそタイトルも『ロテ職人の食育ブログ』にしようかと思ったりはしません。なんかうさんくさい言葉だし。食育って。
いや、食育自体は良いことだと思います。自分が食べているのはどんな物なのかを知り、作ってくれた人達に敬意を表して食べることは大事なことだし、私は自分の子どもにはそういう教育をしたいと思っています。
ただ、食育が変な思想というか考え方と繋がってしまうと、本来の意味合いは失われるのではないかと危惧しているのですよね。
そんなわけで過去ログはこちら。未読の方はまずどーぞ。
「食育」が気になる(05/10/13)
「食育」が気になる その2(05/10/14)
離乳食の頃(05/10/14)
抑うつ傾向および学校不適応と食行動の関連?(05/10/17)
「食育」が気になる その3(06/07/07)
「食育」が気になる その4-朝ごはん実行委員会って何?-(06/07/12)
「食育」が気になる その5-朝ごはん実行委員会へのツッコミ-(06/07/13)
「食育」が気になる その6-描画の解釈について思う-(06/07/20)
「食育」が気になる その7-朝日新聞にも朝ごはん実行委員会の調査結果が-(06/08/23)
で、今回は「三角食べ」についてです。
皆さん、三角食べって知ってますか?

日本人は、従来「三角食べ」をしてきました。三角食べとは、例えばごはん→おかず→おみそ汁→ごはんと、繰り返しで、全体をまんべんなく、均等に食べていく食べ方のこと。このように、ごはんとおかずを口の中で混ぜながら食べることを「口中調味」と言います。おかずと一緒に食べるごはんの量を減らせば、味は濃くなりますし、逆にごはんの量を増やせば味を薄くすることができます。つまり、ごはんを間にはさんで、自分で口の中で味付けをしているわけです。私達はこういった食べ方をすることで、知らないうちに味の深みや幅を広げているのです。

日本の食文化の危機?! ばっかり食べ ~健康の診断サイト カラダカラ
…だそうです。


私と同じくらいの世代の方々だと、小学生の頃、給食の時間に「三角食べをしなさい」と教わった方も多いのではないでしょうか?
でも…個人的に給食で三角食べは辛いものがあるんじゃないかと思うのですよね。だって牛乳があるじゃないですか。
私は基本的に好き嫌いは何もないのですが、牛乳嫌いな人は多いんではないかと。そういう方でなくとも、そもそもご飯食に牛乳ってどうよ?と思ったりもするわけで…「ご飯と牛乳を口内調味」って気持ち悪くないですか?
で、「三角食べ」と「食育」って結構結びついているんですよね。実際、「三角食べ 食育」でGoogle検索してみると多くのサイトが出てきます。
その中の一つでは、よくテレビの料理番組などにも出てくる学校法人服部学園理事長・服部栄養専門学校校長で医学博士の服部幸應氏がこう述べております。

また、「ばっかり食」というのもあるんですね。トレイにハンバーグがあって、スープ(あるいは味噌汁)、お新香、ご飯があったとすると、ハンバーグばっかり食べ、それが終わらないと次にいかない。私は76か国を回って食文化を調べていますが、皆で同じ物を食べるのが家庭料理で、フランスもいろいろな家庭に行きましたが、家庭でコースを食べているかと言うと、スープくらいはコースの中に入りますが、後はあれ食べたりこれ食べたりの「三角食べ」なんです。

これは「口中調味」といって、例えば、甘い、酸っぱい、しょっぱい、苦い、辛いおかずがあったとして、しょっぱいものを口に入れたら、パンをつまんだりご飯を口に入れ、味を中和して塩梅を整えるわけなんです。それが、今のお子さんの中には、辛かろうが甘かろうがそればっかり食べてしまう子がいます。そうすると、人間関係が、相手の気持ちを考えない人になるんです。食というものを通してしつけ易く、こんないい時期はないんです。だから、家族そろって躾です。まさに「食育」なんです。

えーと…なんか食べ物の話がダイレクトに人間関係の話につながってしまうのはどうかと思いますよ。「ばっかり食べの子」=「相手の気持ちを考えない人になる」ってどこにそんな根拠があるんだよって感じでございます。
「口内調味は日本だけのもの」「三角食べが廃れるのは日本文化の破壊である」なんてことを言ってるサイトも見つけてしまいましたが、この服部氏のおっしゃっていることを見れば必ずしもそういうわけでないとわかりますよね。
だいたい、韓国にはビビンパがありますし、アメリカにはハンバーガーやホットドッグがあります。あれは口内調味ではないというのでしょうか?
…話がそれました。
そもそもこの「三角食べ」ってのはどこから来てるのか、ホントに「口内調味」ってことと繋がっているのか、そして現在の幼児教育・学校教育の中では「三角食べ」に関する教育がなされているのか、ずっと気になっていたのですね。
で、見つけましたよ。
06/08/31のエントリ、栄養的に極端な偏りがなければ偏食してても問題ないでご紹介したこちらの本に三角食べについての記述がありました。

子どもの食生活と保育―小児栄養 子どもの食生活と保育―小児栄養
赤石 元子 上田 玲子

樹村房 2003-04
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引用します。

交互食べと三角食べ

 交互食べは米飯が主なエネルギー源であったころの食べ方である。そのころの副食は主食のお米を食べるためのものであり、塩分が高濃度でたんぱく質源は少なかった。このため少量の副食を口に入れれば米飯をたくさん食べられるほど塩分が強かったのである。
 一方、現在の副食は低塩分となり、たんぱく質源食品も多用されているためおいしく、主食がなくても十分食べられるようになった。このため交互食べの必要はなくなった。
 三角食べも副食に副菜、副々菜など質、量とも違うものがある場合には実践しにくい。さらに汁物をたびたび口に入れることは、食物を流しこむ習慣をつけやすいので控えたい。したがって、現在では交互食べや三角食べにこだわらず、4~5歳になってからまんべんなく食べられるよう、食事時に助言する方法が多く採用されている。

だそうです。
確かに「口内調味」ってことはあるのかもしれませんが、交互食べ、そしてその発展型である三角食べはお米をたくさん食べるためのものであり、現在の食生活の変化にはマッチしていないということなのではないでしょうか。
もちろん「この本に書いてあることが全て正しい」というつもりはありません。ただ、何の根拠もなく、あるいは怪しげな根拠で三角食べを奨励しているよりは、妥当だと思われる根拠が示されているだけマシかな、と思うわけです。
なんか長くなってしまいましたが、三角食べについてはまだまだ続きます。

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