研究と臨床 臨床心理学

臨床心理士か心理学者を目指している中学生“high_bridge_t”さんの質問に答えてみる

投稿日:

中学生
※画像はイメージです。

中学生の読者からいただいた質問

昨日のエントリ、「最終学歴=博士後期課程中退」な私が「博士課程修了の何がどう臨床業務に貢献しうるか」を考えてみるに「臨床心理士か心理学者を目指している中学生“high_bridge_t”さん」からコメントいただきました。

全文引用します。

現在.臨床心理士か心理学者を目指している中学生です.突然すみませんが質問があります.

一般的に文系博士は就職に(多くはマイナスの)影響があると聞きますが,臨床心理士として就活するときに博士号所持者はマイナスの影響があるのでしょうか?

もう一つ,旧帝大の中でも心理学の得意分野が異なると思うのですが.そういったことについても教えていただけないでしょうか?

現在,とても迷っています.社会心理学をメインにするか,発達心理学をメインにするか? また,修士号と博士号どちらを取るべきか?

ロテ職人さんの意見がほしいです.よろしくお願いします.

普段、真面目にコメント返信しなかったり(出来なかったり)することも少なからずあるのですが(ホントすみません。でもコメントはうれしいのです)、かなり基本的なところをすっ飛ばして専門家 or 専門家予備軍向けに書いているブログで、中学生くらいの方ですと色々と誤解を与えてしまうような内容かもしれません。

そんなわけで、この質問にはしっかり答えねばならないと思い、ワタクシなりの回答をさせていただきます。

何のために博士課程に進学するの?

“high_bridge_t”さんは中学生でありながら、かなり明確に将来のビジョンを持ってらっしゃるのですね。

それは大変素晴らしいことだと思います。

ただ、ひょっとしていくつか誤解されていることもあるかもしれませんので、改めてご質問の内容を整理させていただきたいと思います。

いただいたご質問は以下の4つに分けられますかね。

・臨床心理士として就活するとき、博士号所持者はマイナスの影響があるか?

・大学ごとの心理学の得意分野について。

・社会心理学をメインにするか?発達心理学をメインにするか?

・修士号と博士号、どちらをとるべきか?

ではお答えしましょう。

博士号を所持した臨床心理士

現状で臨床心理士の資格を取得するためには、指定大学院の修士課程を修了する必要がありますが(専門職大学院というのもありますが、複雑になるのでそちらは割愛)、博士号は不要です。

昨日のエントリでも書きましたが、博士課程(or 博士後期課程)というのは研究したい人、将来は研究者を目指す人のための課程となります。

臨床心理士として就活するために、博士号を持っていること自体はマイナスにはならないでしょうが、ただ、現場に出るのは修士課程修了の人よりも当然遅くなります。

マイナスとして考えられるのはそれくらいでしょうか?

むしろ「なぜ博士課程へ進学する必要があるのか?」という問題があります。

研究者を目指す場合、多くは大学教員というポストを目指すことになると思います。その場合、通常のいわゆる「就活」とは全く異なる過程を経ることになるでしょう。

詳しくは書きませんが、とりあえず研究者を目指さないのであれば博士課程へ進学する必要がありませんし、“high_bridge_t”さんが現実的に心理職に就くという頃でも博士課程修了が臨床家としての必須条件となっているとは考えにくいです。

臨床家を目指すか研究者を目指すか、それとも第三の道か

臨床家を目指すか研究者を目指すか、それを決めるのは大学に入ってからでもいいんじゃないでしょうか。

もちろん、大学入学の段階である程度意識しておくことは必要だと思いますが、大学で心理学を学び始めて「やっぱり研究者は向いてない」とか「臨床家は向いてない」と思われるかもしれませんし、あるいは心理学とは関係ない仕事に就きたいと思う可能性もあります。

その辺の可能性の幅は広くとっておくために、大学進学の際は幅広く心理学を学ぶことができる大学を選ぶのがいいんじゃないでしょうか。

質問には「大学ごとの得意分野」とありましたが、学部の段階ではそれよりも「心理学の各領域をどれだけ幅広く学ぶことができるか」に着目するのがいいかと思います。

あとご質問にはわざわざ「旧帝大の中でも」とあるように、恐らく現在もそれなりの学力を持ってらっしゃるか、あるいはこれから現実的に学力アップを図ろうというところなのではないかと思います。

自宅から通うのかどうかとか、色々と考慮する要因はあるかと思いますが、それらを踏まえた上で原則的には「入れる大学で偏差値の一番高いところ」を狙っておいた方が無難でしょう。

既に述べたように、将来、心理学とは全く関係のない領域で就職される可能性はあります。それはそれで全く問題ないと私は思います。一般企業を目指す場合、なんだかんだ言ってやはり偏差値は高いに超したことはないです。

とにかく今は「学校の勉強がんばってください」という感じになるでしょうか。

社会心理学 or 発達心理学?

「社会心理学をメインにするか?発達心理学をメインにするか?」という質問については、正直、その意図がよくわかりません。

臨床心理職を目指すのであれば、当然、大学院では臨床心理学を専攻することになるかと思います。

ただ、繰り返しになりますが、学部の段階ではとにかく幅広く学ぶことが大切です。ひょっとしたら、臨床とは全く違う領域に興味が出てくるかもしれませんし、それでそちらの領域で研究者を目指す可能性だってあるわけです。

今、中学生ということですから、とにかく将来の可能性は無限です。私みたいなおっさんからすれば、ホントうらやましいw

せっかく無限の可能性を持っているわけですから、ある程度現実的な目標設定をすることも大事ですが、逆にその他の可能性にも目を向けてみてもいいんじゃないかと思います。

志望大学をしぼっていくのは高校に入ってからでもいいんじゃないかと個人的には思う次第であります。

こんな感じで回答になってるでしょうか?

またご質問がありましたら遠慮なくどうぞ。“high_bridge_t”さん以外からもお待ちしております。

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