臨床心理学

心理学は文系?理系?

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心理系学部・学科を目指す高校生向けの一連のエントリの中で、少しコメントいただいたり、あるいはこれまでも何度か聞いたり見たりしてきた問題の一つとして「果たして心理学というの文系の学問なのか?それとも理系の学問なのか?」という問題があります。

大学である程度心理学を修めた人、特に大学関連の職に就いている方にとっては「今さら」な話かもしれませんが、高校生向け記事の補足と思っていただけるとありがたいです。

確かに大学受験関連の書籍を読めば、心理学系の学部・学科はまず間違いなく「文系」にカテゴリーされていることでしょう。しかし、本当にその分類でいいのでしょうか?

黒板

そもそも「文系」「理系」って何?

まず「文系」「理系」、それぞれの定義を調べてみましょうか。

文系とは、主に人間の活動を研究の対象とする学問の系統とされており、理系とは、主に自然界を研究の対象とする学問の系統とされている。有意な成果や果実を得るためには総合的な知見や能力が重要であり、社会における重要度に違いはないが、実際には社会でしばしば「文系」「理系」の区別は利用され、性向や思想信条の差、男女の差、年収の差に有意な違いがあるなどと論じられることがある。

「高等学校」や「中等教育学校の後期課程」などにおける指導の延長から、便宜的に文系(ぶんけい)と理系(りけい)のどちらかに大学教育の内容を分ける習慣がある。二つを合わせて文理(ぶんり)と呼ばれることもある。文系とは主に、人間の行動や思考が何らかの形で関わった現象についての学問とされ、理系とは人間そのものと人間を取り巻く自然全般を、当為的かつ実証的に研究する学問とされる。

文系と理系 - Wikipediaより抜粋

なんとなくわかるような、わからないような…。

「人間の活動を研究の対象とする」「人間の行動や思考が何らかの形で関わった現象についての学問」というと、まさに心理学のことを指しているように思われます。

同じ項目にこんな記述もあります。

しかしながら西欧圏では、学問分野は基本的に自然科学・人文科学・社会科学の3つに大別される。文系と理系は、日本の歴史的な事情によって形成された便宜的な分類である。実際に事物を深く学修・研究しようとすると、文系と理系という二者択一の区分法に、限界が見て取られることは多い。

確かに無理に「文系」「理系」のどちらかに分類しようというのは乱暴なように思われます。

心理学には統計が必須です

13/04/05のエントリ、心理学系学部・学科を志望する高校生の皆さんへ その3 – 入学してから「話が違う!」とならないためのたった一つの心構えでも述べましたが、心理学の研究には統計が必須です。

その一方で「文系学部に入ったつもりだったのに、どうして数学(算数)をやらなきゃいけないの?」と困惑する学生も少なくないですし、Twitterのコメントでも何件かありましたが、学部時代に統計で苦労したという方は大変多いようです。

さらにWikipediaの記述を引用してみましょう。

一般に、理系の学問は数学との親和性が高いため、「理数系」と呼ばれる場合もある。しかし理系に分類される学問の中にも数学的知識を必要としない分野も存在するし、また文系に属する学問の中にも数学的考察を重視している分野(経済学など)は、数学的知識を得ていなければならない。また、考古学も放射性炭素年代測定など理化学的検査の必要が年々増加しているため、やはり数学や理科が重要視される傾向にある[1]。また心理学では脳機能科学や神経科学との関連が密であり、福祉では医療系の知識も必要となる。

更に、理系に属する精神医学は文系に属する心理学と深く関わっており、理系に属するはずの農学には農業経済学や産業経営学など、文系とされる学問で扱われる内容が重視される学科が存在する。因みに農学部の農業経済学科生徒は太平洋戦争中、「文系」と判断されて学徒出陣の際、文科系の諸学問の学生らと同様に徴兵猶予を停止され徴兵されている。また、造園学はランドスケープデザイン学・環境デザイン学として、また建築学/建築学科は、それらを学ぶことができる学科自体が文理双方で多岐にわたって設置されている。

この記述を読めば、現代において、それぞれの学問は密接に関わっており、やはり単純に「文系」「理系」で分けられるものではないことがおわかりでしょう。

ではなぜ未だに「文系」「理系」の分類は用いられるのでしょうか?

大学入試の段階でのカテゴリー分けでしかない「文系」と「理系」

現在、文系・理系のカテゴリー分けというのは、大学入試の受験科目を考える際の目安でしかないというところでしょう。そんな単純な区分けを用いて「文系は、理系は、それぞれ〜な特徴がある」なんて述べてしまうのは滑稽なことです。

そして未だにこんなカテゴリー分けを使ってしまっているがために「文系のはずの心理学系学科で統計が必須になる」ということに気づかないまま大学まで来てしまうということが起こってしまう訳です。

大学入試の段階で、国立・私立大学、どちらも一部では2次試験で数学を課す心理学系学部・学科があると思います。ただ、国立ではセンター試験で数学が必須となりますが、私立の場合は大学入試で数学を全く使わないで入学できるところも少なくないでしょう。

いくら心理系学部・学科の人気が比較的高いとは言え、数学を必須としてしまうと私立大学の場合には志願者数に影響があるのかもしれません。いえ、人気だからこそ、志願者数を維持するために数学を不要とせざるを得ない場合もあると思います。それは仕方のないことなのかもしれませんが、少なくとも受験生に「入学後に数学は必須である」ということをどこかで知ってもらうことは必要なのではないでしょうか?

そして高校生の側でも、少し調べれば心理学において統計が必須だということはわかると思います。将来、本気で勉強したいと思うのであれば、それを知った上で選択していただきたいですし、また、「文系」「理系」というカテゴライズに惑わされず「自分が何を学びたいのか」ということを真剣に考えて欲しいと思います。

以上、心理系学部・学科を志望している方だけではなく、大学進学を希望する全ての高校生にお伝えしたいことでした。

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