臨床心理学

心理学系学部・学科を志望する高校生の皆さんへ その2 - 「大学選び」どうします?

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先週1月24日の記事、心理学系学部・学科を志望する高校生の皆さんへ – 「本当にその選択でいいのですか?」の続編です。未読の方はまずはそちらから。

センター試験も終了し、国公立大学が第一志望の方々は2次試験へ向けて追い込みの時期に入ったことと思います。主要私大の入試も続々と行われており、既に進学先が確定している方もいらっしゃるかもしれません。

さすがにこれから志望大学を変更するのは難しいと思いますが、例えば異なる2つの大学の心理学系学部に合格してどちらの大学に進学すべきか迷っている受験生はいるかもしれません。また現在高校2年生の皆さんは、そろそろ志望校について考える時期なのではないでしょうか。そういった方にとって参考意見を提供できたらと思います。

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もちろん私の意見が絶対というわけではありませんし、最終的には皆さん自身で決断するべき問題です。ただ、長い人生で見たら結果的にはそれほど大きな違いではないのかもしれませんが、現在、大学入学を目指す高校生にとって進路選択というのは人生の大問題であるということはよく理解できます。

そんな迷える受験生、高校生の皆様にとっての「一つの指針」になれれば幸いです。

将来の選択肢を出来るだけ多くするために

例えば、学費、通学距離、履修できる分野の幅などの条件が全く同じ2つの大学で迷っていたとしたら、その場合は入試難易度の高い方を選びましょう。

もしも今、「将来、臨床心理士の資格を取ってカウンセラーになりたい!」と思っていたとしても、大学に入学してみて「自分の進むべき道はやっぱり違った」と一般企業への就職を目指すという方は少なからずいると思います。自分はそうはならないと思っていても、将来どうなるかはわかりません。それほど人数は多くないかもしれませんが、臨床心理学以外の領域で研究者を目指している場合も同様です。

入試難易度の高低が一般企業への就職の有利・不利に直結するわけではありませんが、それでもいつまでこの不況が続くかわからない中で、大学入学の段階で少しでも有利な条件にしておこうというのは、方向性としては間違ってはいないでしょう。

もちろん、いわゆる「偏差値の低い大学」にしか入学できなかったとしても、入学後の努力次第で挽回可能な部分は多いと思います。それは臨床心理士資格取得を目指す場合も研究者を目指す場合も、あるいは一般企業を目指す場合でも、です。ただし、将来の選択肢を出来るだけ多くすることを考えるのであれば、やはり「偏差値の高い大学」の方が相対的には有利なことが多いでしょう。

多くの領域が学べる大学を

前回も述べましたが「臨床心理学」は心理学の一つの領域でしかありません。心理学には実験心理学、感覚知覚心理学、生理心理学、言語心理学、教育心理学、発達心理学、社会心理学、心理統計学など、様々な研究領域があります。

「私はカウンセリングがやりたいんので他の領域は関係ありません」という方もいるかもしれませんが、将来、臨床心理学を専攻したとしても幅広い領域での必修単位を取得しなければなりません。

必修でなかったとしても、ひょっとしたら他の領域の方が面白くなって専攻を変更するかもしれません。あるいは、臨床心理学を専攻して卒論を書く際に、他の領域の知識や知見が役に立つということも多々あります。

したがって「出来るだけ多くの領域が学べる大学」というのも選択基準の一つになると思います。どれだけ幅広い分野で履修できるかというのは、大学のサイトの教員紹介のページで、各教員の専門領域を見ることでわかるでしょう。

もちろん、臨床心理学以外の領域を学びたいと思っている方であっても、同じ理由でやはり出来るだけ多くの領域に渡って学ぶことの出来る大学に行った方がいいと思います。

大学入学の段階で大学院は意識すべき?

現在、臨床心理士の資格を取得する場合、(財)日本臨床心理士資格認定協会の指定を受けた臨床心理士養成に関する大学院修士課程(博士前期課程)の修了が必須となっています。

指定大学院は修了後に直近の試験を受験可能な第1種指定大学院、修了後1年以上の実務経験を経て受験可能となる第2種指定大学院に分かれており、それとは別に修士論文が必須ではなく、さらに臨床心理士資格試験の一次試験で小論文が免除となる専門職大学院があります。

参考リンク
臨床心理士養成に関する大学院 - 日本臨床心理士資格認定協会
指定大学院・専門職大学院一覧 - 日本臨床心理士資格認定協会

大学院進学の際に内部からの進学の方が有利な点は多々あります。外部からの進学と比較すると情報が得やすいということは当然ありますし、内部進学の方が試験で優遇される大学もあると聞きます。

ただ内部進学が目的になってしまうことで視野は狭くなるでしょうし、それこそ将来の可能性は狭まってしまうことでしょう。

自分の能力に自信がないのであれば、内部進学で有利になるということは魅力的に思われるかもしれませんが、そうであるならばなおさら学部の段階で自分の能力を高める努力が必要になるのではないでしょうか?逆に言えば、その努力が出来る人であれば内部進学にこだわる必要もないと思います。

専門職大学院については、私の個人的な意見としてあまりお薦めできないということもありますが、それ以前に大学選択の段階で内部進学の有利・不利ということは意識する必要はないというのが私の見解です。

ちなみに私の大学院時代の後輩で、優秀だと思えるのは外部から進学してきた人が多かったです。もちろん、内部進学でも優秀な人はいましたが。そして内部進学だった私はあまり優秀な大学院生ではありませんでした…というのは余談ですね。

「この先生に教えてもらいたい!」という場合

著書などを読んで感銘を受けて「この先生に教えてもらいたい!」という場合もあるかもしれません。

臨床心理学以外の分野で研究職を目指すのであれば、それも一つの考え方ではあると思いますが、やはりそれも大学院進学の際に考慮した方がいいと思います。

こういう言い方は失礼かもしれませんが、高名な先生を「客寄せパンダ」的に使っている大学もないとは言えません。あるいは、世間的に名前は売れていても業界内で研究者としてはそれほど認められていなかったり、実際に研究者として高名であったとしても後進を育てる能力は(研究室単位で見ても)低いということがあるかもしれません。

そうした内部事情というのは、その業界内に入って初めて理解できる部分が多々あります。ネット等で情報収集できるかもしれませんが、それも限界はあるでしょう。一番早いのはその先生の研究室の大学院生に直接話を聞いてみることですが、高校生にとってはさすがに敷居が高いでしょうし、やはり大学院進学の段階で考慮するのが妥当かと思います。

それでも、ある先生に心酔して「この先生の元でなければ学びたくない!」という方もいるかもしれません。そこまで強い思いを持ってらっしゃるのであれば私も止めはしませんが、くれぐれも自己責任でお願いします。入学してみて「話が違う!」となったら目も当てられません。ただ、そういう人が違う大学に行った場合「やっぱりあの先生のいる大学にしておけばよかった」と思うのかもしれませんが。

心理学以外でも言えることなのかもしれませんが…

以上、私の考える「心理学系学部・学科を志望する高校生のための大学選び」について書いてみましたが、これらは心理学系以外の場合でもかなりの部分が当てはまると思います。

ただ心理学系学部・学科を志望していて、特に将来、臨床心理士資格を取得して心理職に就きたいと考えている高校生にとっては、なかなか現実の厳しさというのはわかりにくい部分もあるでしょう。そう考えると、やはり「将来の選択肢は出来るだけ多く」を原則にするのがいいと思います。

もちろん、経済的な問題などそれぞれに事情はあるでしょうから、そうした様々な条件を考慮した上で皆さんにとって最良の志望校を選んでいただければと思います。

最後に、大学入学はゴールではありません。あくまでもその学問のスタート地点に立ったというだけのことでしかないのです。

それを踏まえて、皆様が充実した大学生活をお送りできることをお祈りしております。

内容はさすが古いですが、それでも「臨床」に偏っていない心理学の実像がわかります。

現物を読んだことはないのですが、著者が結構好きです。多分、妥当な内容だと思います。

高校生というよりは学部生向きかもしれません。「現在」の心理学について幅広く理解するための良書の数々が紹介されています。

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